島津評論 Vol.66[1・2](2009)
特集 先端技術開発

特集論文

18F-イオン濃縮を目的としたPET プローブ合成装置用電気化学的マイクロフローセルの開発

小関 英一1,6齊木 秀和2山原  亮3石川 洋一4中西 博昭5岩田  錬4

島津評論 66〔1・2〕 13~19 (2009.9)

要旨

18F 標識PET 薬剤合成システムでは,高付加価値空間であるホットラボの有効活用のための小型化および高い比放射能を得るための合成時間の短縮が求められる。本稿では,新規に開発した電気化学的手法を用いた18F濃縮フローセルおよびそのPET プローブ合成装置への応用について紹介する。本方法により,従来法と比較して1/3である5.5分間での濃縮を実現でき,これを原料とした微小流路内での高速反応が可能になった。18F 濃縮フローセルは,電極材としてグラッシーカーボン(GC)と白金(Pt)を用い,シリコン系樹脂(PDMS)と石英ガラス基板で構成されている。18F-イオンの捕捉時にはGC にプラスの電位を印加することで18F-イオンをGC 表面に吸着させ,続いて非プロトン溶媒による脱水操作後,GC にマイナス電位をかけながら次工程のフッ素標識反応で用いる溶媒中に18F-イオンを放出させ,濃縮する。この方法は,蒸発による水分の除去を行わないために,濃縮時間の短縮のみならず,高濃度および低含水率溶液の調製が可能であり,特に微小流路内での高速合成反応に適している。


1基盤技術研究所 分子イメージングユニット 工学博士
2基盤技術研究所 分子イメージングユニット 博士(薬学)
3基盤技術研究所 分子イメージングユニット 博士(工学)
4東北大学 サイクトロン・ラジオアイソトープセンター 核薬学研究部 薬学博士
5基盤技術研究所 マイクロTAS ユニット 工学博士
6経営戦略室
※所属名は論文作成時のものです。

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