島津評論 Vol.66[1・2](2009)
特集 先端技術開発

特集論文

ポリ乳酸系両親媒性ポリマーミセル「ラクトソーム」を用いた分子プローブの開発

小関 英一1,5山原   亮2原   功3竹内 恵理4

島津評論 66〔1・2〕 3~12 (2009.9)

要旨

著者らは,新規両親媒性ポリデプシペプチド(親水部:ポリサルコシン,疎水部:ポリ乳酸)の自己組織化により形成される高分子ミセル(ラクトソーム)を開発した。本稿では,このナノ粒子がEPR 効果により内臓への集積が少なくかつ高選択的にがん組織に集積することを近赤外蛍光剤(ICG)標識し,担がんマウスを用いたin vivo 蛍光観測により明らかにした。
本材料の特徴は,生体適合性(体内分解性,代謝性)である。親水部に利用しているポリサルコシンは,生体中に見出されるアミノ酸から構成され,現在,多用されている親水性高分子として工業材料であるポリエチレングリコールと同等以上の親水性を有しかつ生体適合性および生分解性を有する。さらに,疎水部に利用しているポリ乳酸も同様に,生体適合性および生分解性が知られており,骨吸収性材料などの医用材料に利用されている。ラクトソームは,従来の生体適合性ナノ粒子と比較して,粒径の調整およびペプチド等生体材料による修飾などの分子設計も容易であり,診断薬および医薬品の基材として期待できる。


1基盤技術研究所 分子イメージングユニット 工学博士
2基盤技術研究所 分子イメージングユニット 博士(工学)
3基盤技術研究所 分子イメージングユニット 博士(理学)
4基盤技術研究所 分子イメージングユニット
5経営戦略室

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