島津評論 Vol.64[3・4](2007)
特集 ライフサイエンス・分子イメージング

特集論文

NBS/2DE/MS 法による薬剤応答性乳癌タンパク質マーカの探索

市川哲生1Keli OU2Djohan KESUMA3Kumaresan GANESAN3Sou Yen SOON3Suet Ying LEE3Xin Pei GOH3Michell HOOI3Ning HUANG3Wei CHEN3Kun YU4軸屋博之5松尾英一6九山浩樹7西村紀8Patrick TAN9

島津評論 64〔3・4〕 155~167 (2008.4)

要旨

疾患における薬剤応答性タンパク質マーカの発見は,その治療や予後にきわめて重要である。著者らは,乳癌細胞のモデルとしてエストロゲン受容体陽性(ER+)のセルラインMCF―7を用い,これを乳癌治療薬タモキシフェン(TAM)で処理した時に発現が変動するタンパク質を島津製作所が開発した定量的プロテオーム解析試薬NBSCl と2DE/MS を組み合わせる方法により解析し,有益なる知見を得た。TAM 処理と非処理の比較において88個のスポットが明らかな発現差を示した。このうち44個は質量差6Da のNBS ラベル化ペアペプチドとして同定でき,23種の異なるタンパク質が含まれていた。そのうち16個(70%)は,TAM 処理やER 活性との関連が明らかにされていない。これらのタンパク質のうち,GRP78,CK19,PA2G4について生物学的評価として免疫ブロット法による確認,続いてPA2G4については免疫組織化学染色法による評価を行った。さらにこのPA2G4については,対応する遺伝子発現と乳癌再発との関係を調べるため,二つの独立した乳癌患者集団のmRNA および予後に関するデータを使用して検討した結果,新しい予後診断因子になりえる可能性を見出した。以上の結果,NBS 試薬と2DE/MS を組み合わせた解析手法は非常に有効な方法であるといえる。


1Shimadzu Asia Pacific Pte Ltd(現在,分析計測事業部 ライフサイエンスビジネスユニット 薬学博士)
1Shimadzu Asia Pacific Pte Ltd PhD
3Agenica Research, Singapore
4National Cancer Center of Singapore
5Shimadzu Asia Pacific Pte Ltd (現在,九州大学バイオアーキテクチャーセンター 農学博士)
6分析計測事業部ライフサイエンス研究所 理学博士
7大阪大学蛋白質研究所 農学博士
8分析計測事業部ライフサイエンス研究所薬学博士,大阪大学蛋白質研究所
9Agenica Research , National Cancer Center of Singapore ,Genome Institute of Singapore PhD, M
※所属名は論文作成時のものです。

※島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。