島津評論 Vol.64[3・4](2007)
特集 ライフサイエンス・分子イメージング

特集論文

MALDI-MS Imaging を用いた創薬開発の可能性

青木豊1遠山敦彦1嶋田崇史1杉田哲佳2青木智景1海野ゆかり1佐藤孝明2,3

島津評論 64〔3・4〕 147~154 (2008.4)

要旨

病気の診断や治療に必要な情報を可視化する画像診断技術は現代の医学分野において非常に重要な技術である。一方,質量分析法を用いたこの分野への応用として,1997年に組織切片より直接的にイオン化させるマスイメージングという新たな手法が報告された。それ以来,この手法は癌や神経疾患の分子マーカ探索,それらの疾病に対する薬剤代謝の研究にも用いられており,併行して切片の前処理法や機器開発も盛んに行われている。現在までに報告されているマスイメージングの対象サンプルは,凍結組織切片が主である。著者らは,過去に遡った研究を目的として,病理診断で汎用性のあるパラフィン組織切片に着目し,新しい前処理方法を構築した。多くの病院や研究室で長期間保存されているパラフィン組織切片を解析することで,新規分子マーカや薬剤代謝物,脂質,タンパク質の探索に臨床情報を関連づけた統計学的解析への応用が期待できる。


1分析計測事業部 ライフサイエンス研究所
2分析計測事業部 ライフサイエンス研究所 医学博士
3経営戦略室
※所属名は論文作成時のものです。

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