島津評論 Vol.64[3・4](2007)
特集 ライフサイエンス・分子イメージング

特集論文

顕微質量分析装置による生体組織分析

原田高宏1竹内貞夫3出水秀明2古橋治2竹下建悟1小河潔1吉田佳一1星川裕4瀬藤光利5

島津評論 64〔3・4〕 139~146 (2008.4)

要旨

生体組織の形態観察時に,生体分子を質量分析により高い確度で同定し,しかも,高空間分解能でその分布も測定することができる“顕微質量分析装置”の開発を行っている。著者らはすでに試作機を製作しており,その基本性能は報告済みである1)。本稿では,試作した顕微質量分析装置を用いて実際に生体組織切片の分析を行った結果を報告する。レーザの有効照射径10μm 弱でマウスの小脳の質量分析イメージングを行い,高空間分解能で生体分子の分布を可視化することに成功した。また,大腸癌が転移したヒトの肝臓の局所分析を行い,特異的な分布を有するピークについてMSn 同定(n=4)を行うことに成功し,本装置が病理学や薬学などの分野に利用可能であることが示唆された。


1基盤技術研究所
2基盤技術研究所 理学博士
3設計技術センター
4癌研究会 農学博士
5滋賀医科大学 医学博士
※所属名は論文作成時のものです。

※島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。