島津評論 Vol.63[1・2](2006)
特集 ライフサイエンス ―機器・方法の新展開―

特集論文

昆虫無細胞タンパク質合成系の開発と
AXIMA-CFR plus/-QITを用いた合成タンパク質の翻訳後修飾解析

伊東昌章1四方正光1江連徹2鈴木崇3

島津評論 63〔1・2〕 85~92 (2006.9)

要旨

ポストゲノム研究として,遺伝子産物であるタンパク質の構造および機能を解析する研究がますます重要となってきている。それらの研究を行うためには,本来存在する細胞から必要量採取できる場合を除き,まず,目的とするタンパク質を何らかの方法で作り出さなければならない。その方法として,最近では,大腸菌などの生きた細胞を用いる方法のみならず,細胞抽出液などを用いて試験管内でタンパク質を合成する無細胞タンパク質合成系が利用されている。この系は,短時間かつ多検体での処理が可能であり,細胞毒性を有するタンパク質も合成できるという特徴を有し,タンパク質研究のための実験室的スケールでの合成法としてはきわめて有用な方法である。そのような状況のもと,著者らは,市販品として初めてとなる昆虫培養細胞由来の無細胞タンパク質合成試薬キット TransdirectTM insect cell を開発した。本稿では,その開発の経緯と,開発品の特徴,非還元条件でのジスルフィド結合を有するタンパク質の合成,翻訳後修飾解析への応用例などについて述べる。


1分析計測事業部 ライフサイエンス研究所 学博
2分析計測事業部 ライフサイエンス研究所 工博
3分析計測事業部 ライフサイエンス研究所
※所属名は論文作成時のものです。

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