島津評論 Vol.63[1・2](2006)
特集 ライフサイエンス ―機器・方法の新展開―

特集論文

NBS試薬を用いた疾患関連マーカタンパク質の探索

松尾英一1渡辺真2増田太郎3西村紀4

島津評論 63〔1・2〕 37~48 (2006.9)

要旨

著者らは以前,定量的プロテオーム解析手法として,安定同位体標識を利用した NBS法を開発した。この手法は二つの異なる試料,例えば正常組織と病態組織からタンパク質を抽出し,そこに含まれる個々のタンパク質の量的差異を,質量分析装置を用いて解析する手法である。著者らはこの NBS法を実際に様々な生体由来のサンプルに適用し,疾患関連マーカの探索を行ってきた。例えば,大阪大学蛋白質研究所疾患プロテオミクス(Shimadzu)寄付研究部門と大阪大学医学部との共同研究による,大腸がん並びに肝臓がんのマーカ探索プロジェクトや,島津神戸ラボと神戸大学医学部との共同研究による,腎臓がんマーカの探索プロジェクトなどが挙げられる。また,こういったマーカ探索の過程で NBSプロトコルに関する改良や新規マトリックスの発見が行われ,より高感度で効率の良い解析が可能となった。本稿では,初めに新規マトリックスを含む NBS法の改良について概説し,引き続いて大阪と神戸で行われている疾患関連マーカ探索プロジェクトの現状と展望について報告する。


1分析計測事業部 ライフサイエンス研究所 理博
2分析計測事業部 ライフサイエンス研究所
3分析計測事業部 ライフサイエンス研究所 農博
4分析計測事業部 ライフサイエンス研究所 薬博/大阪大学蛋白質研究所
※所属名は論文作成時のものです。

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