島津評論 Vol.63[1・2](2006)
特集 ライフサイエンス ―機器・方法の新展開―

特集論文

AXIMA-TOF2TM-新規MALDI TOF/RTOF質量分析計の開発とその応用

尾島典行1市村克彦2Andrew Bowdler3IanBrookhouse3OmarBelgacem3Emmanuel R aptakis3

島津評論 63〔1・2〕 3~10 (2006.7)

要旨

最近のプロテオミクス分野の発展に伴って,研究分野はより実際の生体試料を扱う領域に広がってきている。そのためにさまざまな生体試料を簡便な前処理で迅速に処理できる分析装置の開発が求められている。著者らは MALDI-TOF型質量分析計に高エネルギーCIDを行えるCIDセルと高性能イオンゲート monoPULSETMを導入した AXIMA-TOF2TMを開発した。タンパク質のトリプシン消化溶液を用いた実験結果から以下の1 ~ 4の特徴を示すことができ,本装置のプロテオミクス分野での有用性を実証した。

  1. アミノ酸配列に依存せず,有用な構造情報を含んだフラグメントイオンを多く検出できるため,高いタンパク質同定能力を有している。
  2. PSDに較べて良好なMS/MSスペクトルを測定できるプレカーサイオンの質量範囲が広い。
  3. さまざまな化合物に対応可能であり,翻訳後修飾タンパク質の分析に応用が期待できる。
  4. 混合物のような複雑な系でも目的の分子を正確に区別して選択し, MS/MSスペクトルが測定できる。

1分析計測事業部ライフサイエンスビジネスユニット理博
2分析計測事業部ライフサイエンスビジネスユニット
3Kratos Analytical LTD., Manchester, U.K.
※所属名は論文作成時のものです。

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