島津評論 Vol.62[3・4](2005)
特集 先端技術開発

普通論文

質量分析法によるタンパク質N/C-末端解析法の開発
―タンパク質での末端解析がなぜ必要か―

山口実1綱澤進2

島津評論 62〔3・4〕 221~226 (2006.3)

要旨

生体内タンパク質の分離手段としての二次元ゲル電気泳動(2D-PAGE)や二次元HPLCのパフォーマンスが格段に向上したのと相まって種々の生物でのゲノムデータベースの充実やソフトイオン化質量分析法によるタンパク質の一次構造解析法の開発等によって,特定環境下の組織で特異的に発現が変動するタンパク質を絞り込み,これらタンパク質の発現量がなぜ環境の変動によって変わるのか,また,これら変動によって生体にどういう変化が現れるのか,という研究「プロテオーム解析」が脚光を浴びている。しかし,この研究が対象とするタンパク質は「N末端からC末端まで特有の順序でアミノ酸が並び,タンパク質によってはそのうちの特定のアミノ酸残基に特殊な官能基が付加した唯一無二の化学物質」であって,個々のタンパク質がそれぞれの化学構造に応じて特有の機能を発揮することを考えれば,いわゆる現行でタンパク質の「同定」と呼ばれている過程では真にタンパク質の化学構造をキッチリ決めているとはいえない。本稿では,タンパク質のキッチリした同定がなぜ必要か,その一手段として必要不可欠なNおよびC末端解析法についてMALDI-TOF型質量分析法を用いた新規手法の紹介,さらには,タンパク質の同定という観点からの末端解析の今後の展開について述べる。


1分析計測事業部 ライフサイエンス研究所
2分析計測事業部 ライフサイエンス研究所 理博
※所属名は論文作成時のものです。

※島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。