島津評論 Vol.62[3・4](2005)
特集 先端技術開発

特集論文

微小空間の二相流を利用した抽出チップの開発

坂本勝正1中西博昭1吉田佳一2北岡光夫3北森武彦4

島津評論 62〔3・4〕 211~220 (2006.3)

要旨

本稿では,マイクロチャンネルを用いた抽出チップの基本特性の評価結果と,二相流界面を安定化する新規な抽出チップの開発について報告する。抽出操作は,化合物の分離を行うのに欠かすことのできない操作であり分析試料の前処理としても非常に重要な操作である。バルク操作は,一般に分液漏斗が使用され抽出効率を上げるために振とう操作を行う必要があるので煩雑である。一方,抽出チップを用いた操作は,マイクロチャンネル中に試料溶液と抽出溶媒を導入して二相流界面を形成するだけでバルク操作と同様な抽出効率を得ることができるので容易である。しかし,これまで二相流界面が安定化する条件については報告がなされていなかったので抽出チップの基本特性を評価した。著者らが検討した範囲内において水と酢酸エチルおよびジエチルエーテルの組み合わせ以外は,マイクロチャンネル中の二相流界面を安定化することが難しく抽出効率を上げることが困難であった。そこでマイクロチャンネルの上下に重ね合わせる構造の二相流界面を安定化する新規な抽出チップを開発した。この抽出チップは,各種有機溶媒で界面を安定化することができるため,二液が接触している時間を長く保つことが可能である。これにより,抽出効率を向上させることに成功した。著者らは,マイクロチャンネルを用いた抽出操作をこれまでより汎用性のあるものにした。


1基盤技術研究所 工博
2基盤技術研究所
3分析計測事業部 技術部
4東京大学大学院 工学系研究科 応用化学専攻 工博
※所属名は論文作成時のものです。

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