島津評論 Vol.62[3・4](2005)
特集 先端技術開発

特集論文

デジタルイオントラップ質量分析装置の開発

古橋治1竹下建悟2小河潔2岩本慎一3Li Ding4Roger Giles4Sergey Smirnov5

島津評論 62〔3・4〕 141~151 (2006.3)

要旨

矩形電圧波形によりイオンを空間的に閉じ込める,デジタルイオントラップ(DIT : Digital Ion Trap)を用いた質量分析装置を開発した。矩形電圧波形は,デジタル回路技術により自在に制御できるので,正弦電圧波形を用いる従来の手法と比べて,質量分析装置の性能向上や多機能化が期待できる。DITでは,矩形電圧の振幅を一定に保ったまま,周波数を変化させて質量分析を行う。周波数を低くすることで,高い電圧を用いることなく,高い質量のイオンを閉じ込めることが可能になる。また,矩形電圧によるイオン閉じ込めの場合,エンドキャップ電極の穴による双曲面電場の歪みは,電場補正電極にDC電圧を印加することで容易に補正でき,高い質量分解能を達成できる。さらに,矩形電圧波形のデューティ比を変えることで高速プリカーサ分離を実現し,フォワードスキャンおよびリバーススキャンを用いることで高分解能プリカーサ分離を実現できる。エレクトロスプレーイオン化および大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化による,異なる二つのイオン源を用いて,DIT質量分析装置の性能評価を行った。


1基盤技術研究所 理博
2基盤技術研究所
3田中耕一記念質量分析研究所
4Shimadzu Research Laboratory(Europe)Ltd. Ph. D
5Shimadzu Research Laboratory(Europe)Ltd.
※所属名は論文作成時のものです。

※島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。