島津評論 Vol.61[1・2](2004)
特集 ライフサイエンス

特集論文

プロテオーム解析のための新手法

松尾英一1西村 紀2

島津評論 61〔1・2〕 63~69 (2004.10)

要旨

ポストゲノム時代に入り,プロテオーム解析の重要性はますます大きくなっている。これは,mRNAレベルでみた遺伝子発現の変化が必ずしも細胞内タンパク質の量的変化とは一致しないためであり,また多くのタンパク質が翻訳後に修飾を受けて機能するが,この翻訳後修飾もゲノム情報からだけでは解明できないためである。プロテオーム解析とは一般的には「タンパク質全体の網羅的解析」を指していると考えられるが,現実的にはそれを実現する完全な手法は存在しない。したがって,既存の手法の弱点を相補する形で新しい手法が開発され,これら複数の方法を補完的に利用することで網羅的な解析を目指した研究が行われている。このような視点に立ち,著者らも(既存のプロテオーム解析法の隙間を埋めるべく)新たなプロテオーム解析手法を独自に開発し,学術誌への発表を行った。すなわち,新規定量的プロテオーム解析手法であるNBS法と,フッ化水素を利用した新規化学的脱リン酸化法である。さらにNBS法に関しては製品化を行った。以下,これら二つの手法について概説する。


1分析計測事業部 ライフサイエンス研究所 理博
2分析計測事業部 ライフサイエンス研究所 薬博
※所属名は論文作成時のものです。

※島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。