特集論文
―形状,厚さ,固定位置の補正を行う定量分析法―
島津評論 60〔3・4〕 137~145 (2004.3)
要旨
電気電子機器などに多用される樹脂中のCd,Pbについて定量分析を行い,分析法や正確度,検出限界を検討した。正確度向上のために,分析法として標準試料を用いる検量線法を採用した。また,ペレット,薄板など種々の形状の樹脂に対応するため,蛍光X線と散乱X線との強度比をとる内標準法も併用した。
標準試料としてポリエチレン(Cd:0~300ppm,Pb:0~590ppm)を使用した。分析線として,CdはKαのみ,PbはLα,Lβ1の二種類を比較検討した。標準試料を測定し,検量線を作成したところ,正確度はCdで3.2ppm,Pbで5.5ppm(Lα),7.5ppm(Lβ1),検出限界もCdで5.7ppm,Pbで4.1ppm(Lα),9.2ppm(Lβ1)になった。
内標準法では形状,厚さ,固定位置を評価した。形状:多数のペレットをそのまま定量した。厚さ:2mmから8mmの薄板を定量した。固定位置:ペレットを装置測定面の中央と前後左右に固定して定量した。その結果,いずれもほぼ安定して定量できることを確認した。
さらに,標準試料としてポリ塩化ビニル(Cd:0~300ppm,Pb:0~620ppm)も評価したが,そのときの正確度はCdで3.8ppm,Pbで10.0ppm(Lα),11.7ppm(Lβ1)であった。また,検出限界もCdで4.4ppm,Pbで9.5ppm(Lα),14.5ppm(Lβ1)になった。
本方法は,前処理が不要で,わずか15分程度で定量できることから,簡単,迅速な分析法としてきわめて有効である。
1株式会社島津総合分析試験センター
2分析計測事業部 営業部
※所属名は論文作成時のものです。
※島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。