島津評論 Vol.60[1・2](2003)
特集 ナノテクノロジー

特集論文

数値シミュレーションによる電子源特性の評価方法について

藤田 真1

島津評論 60〔1・2〕 69~86 (2003.11)

要旨

電子顕微鏡などの電子光学系の設計には数値シミュレーションの手法が不可欠のものとなっている。数値計算法を利用することによって電子鏡筒の開発にかかる時間,労力,費用は大幅に削減され,また数値シミュレーションによってはじめて設計が可能になるような光学系も少なくない。しかしながら輸送光学系(レンズ系)に関しては確立された解析法が存在するものの,電子源については数学的な取扱いが難しくこれまで実用的で定量性のある電子銃特性解析の方法が無かった。
本稿では電子銃内で代表的な電子軌道を計算し,ここからから"電子銃焦点距離"を求め,陰極表面での電子密度関数と組み合わせることにより,電子源(クロスオーバ)の特性を評価する見通しのよい方法について提案した。計算で得られた"輝度分布"データを使ってクロスオーバ径などの実験結果をうまく説明できることが確認された。
提案した方法を用いて電子源特性を評価すれば,数値シミュレーションによって電子銃からレンズ系を通し試料に至るまでのビーム特性の把握が可能となり,最終的なプローブ特性(試料電流とプローブ径の関係)を算出することができる。熱電子銃とSchottky emitterという性質の大きく異なる2つの電子銃を,プローブ形成型の2段レンズ系とともに用いたときに期待されるプローブ特性を計算し,これが異なるふるまいを示す原因を明らかにした。


1設計技術センター
※所属名は論文作成時のものです。

※島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。