島津評論 Vol.58[3・4](2001)
特集 バイオテクノロジー IV

特集論文

Ampdirect(R)を使用した血液直接PCR法

西村直行1中山知子2外池宏司2児嶋浩一2

島津評論 58〔3・4〕 95~100 (2002.3)

要旨

血液等の動物体液中には酵素反応を阻害する物質が多量に存在している。そのためPCR(Polymerase Chain Reaction)等を利用して,これらの検体中に含まれるDNAの解析を行うために,検体中の夾雑物を除去し,目的のDNAを分離,精製するという煩雑な前処理が行われている。著者らが開発したAmpdirect(R)には生体由来物質が引き起こすDNA増幅阻害作用を強力に抑制する効果があり,本試薬を使用することで,以下の1~3の実験結果で示すように,何らの前処理過程を経ることなしに,血液サンプルを直接反応液に添加してPCRを行うこと(血液直接PCR)が可能となった。

  1. 種々の抗凝固剤で処理したヒト新鮮血からの直接PCRで,βグロビン遺伝子を増幅することができた。さらに,新鮮血のみならず,4年間凍結保存した血液からも同様に直接PCRが可能であった。
  2. 血液直接PCRで,2056bpまでのヒトβグロビン遺伝子フラグメントの増幅ができた。
  3. 種々の核内遺伝子およびミトコンドリアDNAの増幅が,異なったヒト血液を使用した直接PCRで安定に行えた。

1分析機器事業部ライフサイエンス研究所医博
2分析機器事業部ライフサイエンス研究所
※所属名は論文作成時のものです。

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