特集論文
生体組織薄切標本のEPMA分析
島津評論 57〔3・4〕 281~286 (2001.2)
要旨
体内に存在する金属元素は,様々な形で人の健康に影響を及ぼしている。従来の病理組織検査においてこれらの金属は,原子吸光法,組織染色法などで検査・測定が行われてきたが,分析者の技術に大きく依存する傾向がある。
一方,EPMAという高感度な微小部元素分析装置が様々な固体試料で幅広く利用されているが,生体試料においては従来積極的に使用されてはいない。その理由の一つに試料の調製技術が挙げられるが,組織病理学で一般的に用いられる薄切病理組織切片をスライドグラスではなくカーボン試料台に貼り付ける,という単純な方法で,経年変化に強く,電子ビームの熱的な損傷にも耐えられる試料調製を行うことができた。この試料調製によってEPMAでの分析が実用的になり,その結果検体中の元素分布を直接的かつ定量的に知ることができるようになった。
この検査方法はウイルソン病,超硬合金肺などすでにいくつかの具体的な病理診断に応用されている。
1新潟大学 機器分析センター
2新潟大学 歯学部 歯博
3表面・半導体事業部
※所属名は論文作成時のものです。
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