普通論文
AFLP法によるブナの集団の遺伝的構造の解析
島津評論 57〔1・2〕 115~119 (2000.8)
要旨
日本各地に分布するブナ(Fagus crenata,Blume)の7つの集団から合計121個体の葉のサンプルを採集し,AFLP法を用いて遺伝的変異を解析した。2組のプライマーについて,それぞれ214および120本,合計334本のバンドが検出された。それぞれの組について,39.2%および39.9%のバンドが多型的であった。遺伝的変異の量を塩基多様度 π を用いて推定したが,0.01057から0.01562の範囲になった。これはシロイヌナズナの生態型で見られる量とほぼ等しく,一方ボルネオの熱帯雨林のフタバガキ科樹木について推定された値の2分の1程度となった。平均ヘテロ接合度に基づく遺伝的距離を推定し,これに基づいて集団間の系統関係をUPGMA法によって求めた。この結果,日本のブナの集団は遺伝的に東北日本海側と,西南太平洋側のグループに大きく分かれることがわかった。
1愛媛大学 農学部
2分析機器事業部 ライフサイエンス部農博
※所属名は論文作成時のものです。
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