島津評論 Vol.56[1・2](1999)
特集 センサ・デバイス

特集論文

小型薄膜フラックスゲート磁気センサとその応用

吉見健一1藤山陽1務中達也1中西博昭1山田康晴2吉田多見男3

島津評論 56〔1・2〕 19~28 (1999.8)

要旨

薄膜フラックスゲート磁気センサ(TFGセンサ)を2.6 mm角のチップ上に作製した。あわせて駆動回路をHIC化することにより,センサ全体を小型化し実用性の向上を図った。コア断面積の拡大と作製工程の改善により素子単体の特性を向上させたこと,および駆動回路をこの素子に対して最適化したことにより,チップサイズを小型化し,かつ励振周波数を下げたにもかかわらず前回報告(島津評論,53,75(1996))と同等以上のセンサ特性が得られた。

また今回新たに,同じチップサイズで直交する2個の感度軸を持つ2軸TFG素子を開発し,センサ特性を評価した。

小型かつ高感度というこのセンサの特長を生かす応用として,2軸TFG素子を用いた方位計測,1軸TFG素子を用いた電流測定および非破壊検査について検討した。方位計測では,2軸TFG素子の2個の感度軸が直交する軸の周りに回転させたとき,地磁気を基準として±0.3゜の精度で方位角の計測が可能であった。電流計測では,±2 Aの範囲の直流電流に対して,分解能0.3 mAの測定が可能であることを確認した。非破壊検査では,引張試験に際してステンレスや鋼材などに生じる,マルテンサイト変態に起因すると思われる磁気パターンを確認することができた。


1基盤技術研究所
2生産技術研究所
3基盤技術研究所工博
※所属名は論文作成時のものです。

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