島津評論 Vol.56[1・2](1999)
特集 センサ・デバイス

特集論文

マイクロマシニング技術を用いた石英製電気泳動チップの作製とその基本特性評価

中西博昭1西本尚弘1叶井正樹1阿部浩久1九山浩樹2荒井昭博3吉田多見男4

島津評論 56〔1・2〕 3~9 (1999.8)

要旨

マイクロマシニング技術を用いて,石英基板上に電気泳動用のキャピラリーを形成した電気泳動チップを作製する技術を開発した。今回,作製と評価を行った電気泳動チップの大きさは11 mm×28 mm×1.5 mmであり,幅50 μm×深さ20 μmの2本の流路を形成したベースプレートと,泳動液のリザーバを形成したカバープレートを直接接合することで形成している。石英チップの接合には,室温にて石英基板の接合が可能な,1%HF水溶液を用いた接合技術を新たに考案し,応用した。さらに,作製した電気泳動チップを用いて,印加する電圧を適切に制御することで数10 plという微量なサンプルを定量的に簡便に導入できること,熱の放散特性が優れているため秒オーダの高速分析が可能なこと,分離長17 mmにおいて理論段数は約2500段であることなどを確認した。ウェーハ単位で作製した石英製チップの分離特性のばらつきは,約2%であった。石英製チップは紫外光の吸光度検出が利用できるため,その応用範囲は広いと考えられる。


1基盤技術研究所
2基盤技術研究所農博
3分析機器事業部 LC部
4基盤技術研究所工博
※所属名は論文作成時のものです。

※島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。