島津評論 Vol.55[3・4](1998)
小特集 新素材・半導体の分析・試験II

特集論文

原子層モニタ装置 TALIS-9700 の開発とその応用

西原隆治1藤田広之1林茂樹2篠原真3

島津評論 55〔3・4〕 259~269 (1999.3)

要旨

同軸型直衝突イオン散乱分光法(CAICISS:CoAxial Impact Collision Ion Scattering Spectroscopy)の原理を応用し,薄膜成長過程の最表面の原子種をその場でモニタする原子層モニタ装置 TALIS-9700 を開発した。TALIS-9700 は従来機の CAICISS-Iをより小型化し,高性能化したものである。本体の外形寸法は382×512×170(L×H×W,mm),重量は15 kgで,従来の CAICISS-Iに比べると体積比で約1/50,重量比で約1/20という小型化に成功した。これにより,成膜装置などにCF70フランジポートがひとつあれば,どのような方位でも取り付けられるという長所をもつ。

TALIS-9700 はMBEやレーザMBEなどによる半導体や酸化物・窒化物・金属などさまざまな薄膜成長過程のその場観察,特に最表面原子層を観察するのに適しており,成膜過程において原子層レベル以下の成長制御やその成長機構を評価・制御するのに極めて有効である。また,成長後の薄膜最表面の構造解析も行うことが可能であり,薄膜最表面の定性・定量分析に極めて有力な装置である。

本稿では,このようなさまざまな特徴をもつ TALIS-9700 の開発コンセプトおよびそのアプリケーションについて報告する。


1表面・半導体機器部
2基盤技術研究所 工博
3表面・半導体機器部 工博
※所属名は論文作成時のものです。

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