島津評論 Vol.55[1](1998)
特集 産業機器II

普通論文

X線回折法によるアスベストの定量分析

関口晴男1

島津評論 55〔1〕 77~81 (1998.8)

要旨

X線回折法を用いたアスベストの定量分析における測定精度の評価とその改善法について検討を行った。測定試料としてアスベスト類の代表的な鉱物であるクリソタイルの標準試料を用いて,含有量0.5~20%の範囲の検量線用試料を作製した。回折線の測定にステップスキャニング法を用いて,その測定精度を高める要因について検討を行った結果,以下のことがわかった。

  1. 回転揺動法,回転法,静止法の検量線における直線性の精度を比較した結果,それぞれ,正確度(単位:%)σd=0.22,σd=0.31,σd=0.63の値が得られた。
  2. 回転揺動法を用いた1%の試料につき10回の詰替え再現性から,その測定値の信頼性を求めた結果,1.149±0.044%の信頼限界値が得られた。
  3. 含有量が低い試料では積分時間を大きく設定することが効果的であり,含有量1%の標準試料から求めた結果,検出限界値は0.42%が得られた。また,実測の回折パターンにおいては含有量0.5%の回折線が確認できた。

今回の測定から,検量線の正確度の改善法として,回転揺動法は,静止法および回転法と比較して有効であり,回転と組み合わせた揺動が測定精度を高めることがわかった。また,測定値の信頼性と低含有量の試料の検出限界を高めるには,測定条件の設定において各ステップの積分時間を大きくとることが,回折線強度の統計的な変動を少なくし,測定値の信頼性を高めることがわかった。


1表面・半導体機器部
※所属名は論文作成時のものです。

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