島津評論 Vol.54[3](1997)
特集 物性評価・試験

普通論文

ジベンゾスベリル基及びジベンゾスベレニル基の
ペプチド固相合成におけるアミノ保護基への応用(第2報)
―新規アルギニン誘導体の合成―

野田昌樹1ミハエルキッフェ1

島津評論 54〔3〕 223~229 (1997.10)

要旨

10,11-Dihydro-5H-dibenzo[a, d]cyclohepten-5-yl (dibenzosuberyl (Sub))基,2-Methoxy-10,11-dihydro-5H-dibenzo[a,d]cyclohepten-5-yl[metho-xydibenzosuberyl(Me-Sub)]基,及び 5H-dibenzo[a, d]cyclohepten-5-yl (Dibenzosuberenyl (Suben)) 基をグアニジノ保護基とした新規アルギニン誘導体 Fmoc-Arg(Sub)-OH,Fmoc-Arg(Me-Sub)-OH,及び Fmoc-Arg(Suben)-OH を合成した。これらの新規アルギニン誘導体の酸による脱保護速度は,Fmoc-Arg(Sub)-OH は25% TFA で30分,Fmoc-Arg(Suben)-OH は25% TFA で20分,さらに Fmoc-Arg(Me-Sub)-OH は5% TFA で15分以内にそれぞれ保護基を遊離し,穏和な酸処理により容易に脱保護された。これらの新規アルギニン誘導体を用い,トリプトファン(Trp)含有ヘキサペプチドアミド H-Gly-Ala-Gly-Trp-Ala-Arg-NH2 及びヘキサペプチド H-Trp-Arg-Arg-Arg-Arg-Val-OH の合成を試みた。 Trp として Fmoc-Trp(Boc)-OH を用いれば,合成したそれぞれの保護ペプチドレジンの脱保護(50% TFA,1時間)により,穏和な酸条件で短時間に,目的とするヘキサペプチドを合成することができた。生成物には副生成物を含まず高収率である。Trp として Fmoc-Trp-OH を使用した場合には副生成物を生ずるが,低温(6℃)でクリーベイジを行えば副生成物を抑制することができる。


1基盤技術研究所 薬博
※所属名は論文作成時のものです。
2ノバルティスクロッププロテクションAG(スイス国) 理博

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