島津評論 Vol.54[1](1997)
特集 ライフサイエンスと分析・試験

特集論文

原子間力顕微鏡による微生物の簡便な観察法

福島繁1児嶋浩一1片所由加里1大橋鉄雄2竹田美文3

島津評論 54〔1〕 41~46 (1997.3)

要旨

原子間力顕微鏡は光学顕微鏡の約100倍以上の解像度を有し,ナノメートルレベルでの観察が可能である。著者らは,この高解像度に着目し,原子間力顕微鏡を微生物の形態検査へ応用できるかどうか,その可能性について調べた。 純培養した菌を精製水,またはパラホルムアルデヒドとポリ-L-リジンとの混合液(PFA-PLL混合液)に懸濁させたのち,カバーグラス上で風乾させたものを試料として,原子間力顕微鏡で観察した。その結果,試料をセットしてから,わずか数分後に,菌体,鞭毛,出芽痕などの鮮明な画像が得られた。迅速性,簡便性,および高解像度の点から,原子間力顕微鏡の微生物検出検査への応用が可能であると判断した。とりわけ,1.臨床検査材料および事故食品中における病因または原因微生物のおおよその見当づけ,2.乳酸菌やビール酵母など食品製造に使用する微生物の状態管理,3.試料中の微生物数の測定などに有効であると考えられた。


1基盤技術研究所 医博
2分析機器事業部 LC部
3国立国際医療センター研究所 医博
※所属名は論文作成時のものです。

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