掲載されている内容はすべて発表日当時のものです。その後予告なしに変更されることがありますのであらかじめご了承ください。
2022年2月21日 | プレスリリース
細胞培養の条件最適化ソリューションの共同開発へ
AIスタートアップのエピストラと実証実験を開始
島津製作所は、AIスタートアップであるエピストラ株式会社(所在地:東京都港区、代表者:代表取締役CEO 小澤陽介、以下エピストラ)と「細胞培養に用いる培養条件最適化ソリューション」の共同開発について合意しました。両社は2024年中の同ソリューションの製品化を目指してまいります。
開発中のソリューションは、当社製トリプル四重極型液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS/MS)および「LC/MS/MSメソッドパッケージ 細胞培養プロファイリング Ver.2」によって計測される培養上清成分(125成分)を利用して、エピストラの「実験計画支援AI(Epistra Accelerate)」が培養状態の推定と、その推定に基づく実験計画を作成するというものです。本ソリューションは、抗体医薬などの生産における培養や遺伝子・細胞治療、再生医療向けの培養の条件検討を効率化します。
細胞内で特定の物質を生産させる際には、連動して遺伝子ネットワーク(シグナル伝達系や代謝系)の活性化などにより、細胞の代謝物や形態が変化します。そのため、代謝物が含まれる培養上清の成分パターンの特徴を抽出することで、目的物質の生産量を向上させるための条件検討にかかる時間の短縮に繋がります。島津製作所とエピストラは「細胞培養に用いる培養条件最適化ソリューション」の共同開発を目指して、次世代バイオ医薬品製造技術研究組合(通称MAB組合)の組合員として細胞提供※を受けるとともに、MAB組合関係者の協力および技術指導のもと、実証実験を開始しました。培養上清をLC-MS/MSで分析し、最終的な抗体収量や品質を向上するAIの開発を進めていきます。
【写真】実証実験に用いる、自動前処理装置「C2MAP-2030」とLC-MS/MSからなる「C2MAPシステム」
LC/MS/MSメソッドパッケージ 細胞培養プロファイリング Ver.2
培地成分および細胞からの分泌代謝物から成る合計125成分を20分以内に分析するLC/MS/MS用のメソッドです。従来はアミノ酸類、ビタミン類など化合物群ごとに分析されてきたため手間がかかりましたが、本メソッドパッケージにより、20分以内の一斉分析が可能となりました。グルコースやアミノ酸など、高濃度で含まれる成分とビタミンなどの微量成分を含む培地用に分析メソッドが最適化されていますので、幅広い成分を一斉に分析できます。また分離条件の検討や各化合物に対するMSパラメータの最適化など、煩雑な作業なく分析を始められるReady to Use Methodとなっています。
Webサイト:https://www.an.shimadzu.co.jp/lcms/tq-option/mp_profiling_cell-culture.htm
実験自動最適化システムEpistra Accelerate
ライフサイエンスの研究開発では、手作業での実験と試行錯誤の繰り返しを要因とした様々な課題が存在します。 AIによる自動実験最適化システム Epistra Accelerateにより、これまでよりも少ない試行回数で目的とする最適条件を発見できます。
エピストラ独自開発の自動実験計画AIは、ベイズ最適化技術をベースとした同社独自のアルゴリズムを実装した、ライフサイエンスの問題を解くために強化したAIです。ライフサイエンスの問題には標準のベイズ最適化技術を適用する上で3つの問題(高次元・高ノイズ・高コスト)があり、独自アルゴリズムによりこれらを解決します。
Epistra Accelerateは、理化学研究所との共同研究で熟練した匠の技を超える分化効率を達成するプロトコルを自動的に探索することに成功しました。バイオ素材、食品、製薬などの大手企業への導入も進んでいます。