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2021年1月19日 | プレスリリース 石油メジャーの仏トタル社および欧州の2大学と共同研究契約を締結
バイオ燃料の研究に資する画期的な「含酸素成分分析システム」の開発へ

島津製作所は、仏石油メジャーのTOTAL(以下トタル社)、仏ポー大学、スペインのオビエド大学とクリーンエネルギー分野における包括的な共同研究に関する協定を締結しました。4者は2年以内にバイオ燃料の研究に役立つ「含酸素成分分析システム」の開発を目指します。同システムは、当社のガスクロマトグラフィー技術に、トタル社らが共同で保有する特許技術を組み合わせた画期的な分析装置となります。

「2050年までに二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)」という社会的な目標の達成には、バイオエタノールやバイオディーゼルといった二酸化炭素排出量が少ない燃料の普及を通じて、化石燃料への依存を減らす必要があります。ただし、バイオ燃料には有機酸やアルデヒド、フェノールなど含酸素成分が含まれており、品質の安定性を阻害します。成分が特定できれば除去は難しくありませんが、バイオ燃料には未知の含酸素成分が多数含まれています。効率的な成分特定が技術的に難しく、業界標準となる分析手法が確立されていません。

トタル社、ポー大学、オビエド大学の3者は「ガスクロマトグラフで分離した化合物を元素レベルに分解し、質量分析計(MS)などで検出する」という革新的な技術で特許を取得しています。この特許技術を用いれば、「数百本のピーク(測定結果のグラフで成分の存在を示す波形)を一本ずつ吟味していく」という、従来は数時間かかっていたバイオ燃料の含酸素成分の特定をわずか数十分に短縮できます。また、作業者の技術に関わらず安定した測定結果も得られます。当社およびトタル社、ポー大学、オビエド大学が開発する「含酸素成分分析システム」は、バイオ燃料の普及に向けた研究開発や生産改善に貢献いたします。

 

トタル社の最高技術責任者(CTO)上級副社長 Marie-Noëlle Semeria

「この革新的技術はTOTALの研究開発部門とポー大学およびオビエド大学との共同研究の成果であり、『2050年までに二酸化炭素ネット排出量ゼロ』というTOTALとしての気候変動に関する社会的な目標に沿うものです。バイオ燃料の製品化には生産工程における正確な含酸素成分の測定が欠かせません。島津製作所とともにイノベーションを加速させられることを楽しみにしています。」

 

島津製作所分析計測事業部事業部長 丸山秀三

「当社が欧州メーカーと提携して、ガスクロマトグラフ質量分析計の国産化に乗り出してからちょうど50年が経ちます。この間に様々なイノベーションを通じて、当社独自の製品を数々開発してきました。再び欧州の著名な大学や企業と組んで、環境に貢献できる技術の開発に取り組めることは大変光栄です。」 

トタル社(フランス) TOTAL SE

燃料、天然ガス、低炭素電力を生産・販売するエネルギー供給企業大手。多くの人々が安全・安価・クリーンなエネルギーを利用できるように従業員10万人がより良いエネルギーの供給に取り組んでいます。「責任あるエネルギー供給大手となる」という目標のもと、130カ国以上で事業を展開しています。

ポー大学(フランス) University of Pau (UPPA) in France

スペインとの国境近くに位置する総合大学。4つのキャンパスでは、14000人以上の学生が、理工学、文学、言語、社会科学、法学、経営学、経済学などを学んでいます。2017年、ポー大学のEnergy and Environment Solutionプロジェクト(E2S UPPA)がI-SITE(2017年からフランスで始まったエクセレンスイニシアチブ)を受賞しました。プロジェクトの核となる科学分野は環境とエネルギーであり、最先端の設備を有する著名な研究所が大きな役割を果たしました。2017年のI-SITE受賞後、ポー大学はプロジェクトの新名称E2S UPPAをブランド登録し、大学の活動模範としています。E2S UPPAの大きなメリットの1つは、グローバル企業との強力な関係です。共同事業によって、企業も期待通りの科学的な成果を得られます。

オビエド大学(スペイン) University of Oviedo (UO) in Spain

スペインの北海岸、アストゥリアス自治州にある高等教育・研究機関。400年以上の歴史を持ち、すべての分野で欧州高等教育圏(EHEA)に適合した学士号と、国内や海外の大学および250以上の企業と協定した大学院の学位プログラムを受けられます。アストゥリアス州で実施される研究開発およびイノベーションに関する活動の80%がオビエド大学で実施されており、産業界への知識移転を促す最先端のサービスと設備を備えています。研究成果から得られる収入は年間約4000万ユーロ、研究プロジェクトを実施するため企業と結んでいる契約や合意は500件近くに達します。地域の工業団地とアストゥリアス州の医療ネットワークと密接な関係を持つ2つの専門チーム(エネルギー、環境と気候変動、およびバイオ医薬と健康)があります。