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2021年11月30日 | プレスリリース バイオ×デジタル技術で脱炭素社会実現に更なる貢献を
神戸大学発ベンチャー バッカス・バイオイノベーションに出資

島津製作所は11月30日に神戸大学発ベンチャーである株式会社バッカス・バイオイノベーション(以下バッカス)に出資するとともに、業務提携契約を締結しました。バッカスは先端的なバイオ技術を有しており、これとデジタル技術を融合させた「スマートセル」分野に強みを持っています。当社は、バッカスへの出資によりスマートセル分野に本格参入し、革新的な分析計測技術の開発を通じて、脱炭素社会の実現に貢献していきます。

 

出典:経済産業省 バイオ小委員会報告書 バイオテクノロジーが拓く「第五次産業革命」

出典:経済産業省 バイオ小委員会報告書 バイオテクノロジーが拓く「第五次産業革命」

 

スマートセルとは、狙った有用物質を効率よく大量生産できるように人工的に遺伝子を変化させた「賢い細胞」のことです。ゲノム編集、ゲノム合成等の「バイオ技術」とAI、IT等の「デジタル技術」の融合で、従来は大量生産が困難だった物質の生産効率改善などが期待でき、医薬品や食品、新素材、環境など様々な領域で技術革新をもたらします。また、スマートセルの活用は「脱炭素」の観点からも必要不可欠とされています。すなわち、石油や天然ガス由来のものづくりから、バイオ技術を活用したものづくりに移行することで化石燃料不使用が実現できます。さらに、大量のエネルギーを使う従来の生産方法をバイオ生産に置き換えることができれば二酸化炭素排出量の削減につながり、「脱炭素」が可能となります。

ただし、産業化には「狙い通りの物質が生産できたかどうかの迅速・正確な確認」や、「研究室で試作した新規物質の高品質での大量生産」などの課題があります。また、スマートセルを開発し、狙った物質を生産するシステム(バイオファウンドリ)の事業は主に米国の大手数社が手掛けており、これらの企業への高額な委託費用や煩雑な契約などの懸念から、日本企業においてはスマートセルで生産する新規物質を手軽に活用しにくい点も課題でした。

島津製作所は液体クロマトグラフ(LC)や質量分析計(MS)による分析計測技術を利用してスマートセル分野に貢献してきました。2016年からは5か年にわたって国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクトとして神戸大学と共同研究を行い、細胞からの代謝物の分析に関して「前処理時間の短縮」「分析の高精度化」などを実現しています。

バッカスは神戸大学発のバイオベンチャーです。神戸大学副学長・科学技術イノベーション研究科長 近藤昭彦教授(バッカス取締役)、神戸大学先端バイオ工学研究センター長 蓮沼誠久教授(バッカス技術アドバイザー)がNEDOプロジェクトなどで培ってきた技術をもとに、顧客ニーズに合わせてスマートセルを創出する開発受託サービスに取り組んでいます。同じく神戸大学発のバイオベンチャーでゲノム編集を手掛ける株式会社バイオパレットやDNA合成を手掛ける株式会社シンプロジェンとも連携し、独自性の高い最先端技術を提供しています。

2022年1月より当社は、業務提携契約に基づきバッカスと「ハイスループット化に向けた分析機器の改良」など複数テーマで共同研究を行います。合わせて当社社員を1名派遣してスマートセル分野の様々な課題に取り組みます。当社は、2030年には市場規模が300兆円にも達するとされるバイオ関連市場において、バッカスと提携して日本初のバイオファウンドリ構築を目指します。また、共同研究を通じてスマートセル分野における最先端ニーズを捉え、いち早く製品開発へのフィードバックを行うことで社会課題解決につなげてまいります。

 

当社の液体クロマトグラフ質量分析計が並ぶバッカス社のラボ

当社の液体クロマトグラフ質量分析計が並ぶバッカス社のラボ

 

出資先企業の概要

会社名  株式会社バッカス・バイオイノベーション
本社所在地 神戸市灘区
代表者 代表取締役社長 丹治幹雄
設立 2020年3月
事業内容 統合型バイオファウンドリ
主な出資者 DEFTA Limited (香港、Director:原 丈人)、DEFTA Healthcare Technologies,L.P. (ケイマン)、ロート製薬株式会社(大阪府大阪市、代表取締役社長:杉本 雅史)、太陽石油株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:岡 豊)、双日株式会社(東京都千代田区、代表取締役:藤本 昌義)
ウェブサイト https://www.b2i.co.jp/

バイオファウンドリについて

バイオファウンドリとは、微生物や植物・動物等の細胞でゲノム編集などのバイオ技術とAI技術を用いて遺伝子を変化させたもの(スマートセル)を開発し、狙った有用物質を効率よく大量生産する仕組みです。

まず、狙った物質を効率よく作るような代謝経路と遺伝子をAIが設計します(Design)。次に、設計に従ってゲノム編集などで遺伝子を操作し微生物・植物を生成します(Build)。その後、当該微生物・植物から生産された物質が狙い通りの質・量かを評価します(Test)。最後に、再びAIが結果を解析し物質の生産パターンを学習します(Learn)。学習した情報は遺伝子設計に反映され、新たな設計が行われます。この開発サイクルは、それぞれの頭文字をとって「DBTL」と呼ばれています。バイオファウンドリでは開発サイクル(DBTL)を高速に回転させることで、合理的かつ効率的に新規物質の開発を行います。

 

関連情報
双日株式会社プレスリリース