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2021年4月26日 | プレスリリース
質量分析計による糖鎖解析を簡便・高感度・詳細に
シアル酸結合異性体判別用安定化試薬キット「SialoCapper™-ID Kit」の発売
写真:シアル酸結合異性体判別用安定化試薬キット「SialoCapper-ID Kit」
島津製作所は、4月26日にシアル酸結合異性体判別用安定化試薬キット「SialoCapper-ID Kit」(シアロキャッパーアイディーキット)を発売いたします。本製品は、糖鎖をMALDI(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法)※1型の質量分析計(以下MALDI-MS)で測定するための前処理技術「Sialic Acid Linkage-Specific Alkylamidation(SALSA)法」に用いる試薬キットです。
SALSA法※2 とは、化学修飾でシアル酸※3を保護安定化すると同時に、その結合様式に依存した質量変化を与えることで、本来質量が等しく区別できない結合異性体※4を質量分析で判別する当社独自のシアル酸結合様式特異的修飾技術です。
糖鎖はバイオ医薬品の開発や品質管理、感染症・がんなどに関する研究において注目されています。特にシアル酸は細菌や細胞の性質に影響を与えており、その結合様式はウイルス感染の仕組みにも関わっています。本試薬キットは、「MALDImini™-1」「MALDI-8020」「MALDI-7090」「AXIMAシリーズ」といったMALDI-MSと併せて使用する製品です。島津製作所は、糖鎖研究に取り組む研究機関や受託分析会社、製薬企業などに本製品を国内外で販売することで、ライフサイエンス分野の研究開発に貢献していきます。
※1マトリックス(イオン化補助剤)を混ぜた試料にレーザーを照射することで、タンパク質のような高分子化合物までイオン化する技術です。
※2 SialoCapper-ID Kitで行うSALSA法は、当社開発の技術を北海道大学 古川潤一先生・花松久寿先生との協力により改良したものです。
※3 糖鎖末端に存在する糖の一種(酸性糖)で、糖鎖を負に帯電させる重要な単糖です。
※4単糖同士のつながり方(結合様式)が違うものを指し、質量は同じでも構造が異なります。シアル酸の結合様式は主にα2,3-とα2,6-結合が知られています。
新製品の特長
1. シアル酸結合異性体を簡単に判別
シアル酸結合糖鎖の分離や判別は、通常のクロマトグラフィーや質量分析では困難です。本製品で糖鎖を前処理することで、結合様式の違いを質量差として質量分析で判別します。
2. シアル酸結合糖鎖の感度向上
シアル酸結合糖鎖を分析しようとするとシアル酸の脱離が生じて、分析を阻害することがあります。本製品の使用はシアル酸の脱離を防ぎ、分析精度を安定化させます。
3. 高い汎用性と拡張性
本試薬による前処理は、試料と本試薬を混ぜて簡単な精製を行うだけとなります。糖鎖分析でよく使われる「BlotGlyco®」(住友ベークライト株式会社製)との併用が可能です。
製品名 | シアル酸結合異性体判別用安定化試薬キット「SialoCapper-ID Kit」 |
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希望販売価格 | 20万円(税別、10試験分) |
販売目標 | 発売後1年間で国内外合わせて140キット |