掲載されている内容はすべて発表日当時のものです。その後予告なしに変更されることがありますのであらかじめご了承ください。
2021年6月25日 | プレスリリース
島津製作所と堀場製作所、計測機器「LC-Ramanシステム」を発売
「わける」と「みえる」技術の融合により、様々な分野での研究開発に新たな価値を提供
株式会社島津製作所(代表取締役社長:上田 輝久 以下、島津製作所)と株式会社堀場製作所(代表取締役社長:足立 正之 以下、堀場製作所)は、島津製作所の高速液体クロマトグラフ(HPLC、以下LCと表記)および堀場製作所のラマン分光装置(以下ラマンと表記)を融合させた計測機器「LC-Raman(エルシー・ラマン)システム」を本日、発売します。
本製品は、昨年8月に両社が開始した協業の成果で、世界初※となる複合システムです。LCの「わける」技術と、ラマンの「みえる」技術の結合により、計測の精度や効率を大幅に高めるとともに、未知成分の検出も期待でき、新たな計測価値を提供します。
両社は、京都から世界へと優れた技術を発信し、グローバル社会への貢献を目指します。
左から、当社 分析計測事業部LCビジネスユニット プロダクトマネージャー 渡邊 京子、当社 分析計測事業部 副事業部長 冨田 眞巳、早稲田大学 理工学術院 教授 竹山 春子、堀場製作所 開発本部長 西方 健太郎、同社 バイオ・ライフサイエンスプロジェクト 副プロジェクトマネージャー 内ヶ島 美岐子
開発の背景
人々の安全と健康を守るヘルスケアや製薬などのライフサイエンス、最先端の材料開発に取り組むマテリアルといった成長市場は、近年これまでにないスピードで変化を遂げています。このような分野の研究開発ではより正確かつ効率的な計測が重要です。
島津製作所のLCは混合試料から計測対象を抽出する「分ける」技術に優れ、対象成分の正確な定量に強みがあり、一方、堀場製作所のラマンは分子構造の違いを判別する「見える」技術に優れ、未知成分の推定に強みがあります。両製品はそれぞれ日本国内でトップシェア※を獲得しています。両社が強みを持つ2つの技術を高い次元で結合することで、イノベーションのさらなる加速を目指し、このたび「LC-Ramanシステム」を共同で開発しました。
※ 両社調べ(2021年6月時点)
新製品「LC-Ramanシステム」
製品の特長
1. 「くっきり」判別:混合試料の構成成分を明確化
LCが効率的に混合試料中の成分を分離し、成分ごとにプレート上に滴下して濃縮します。続いてラマンが各成分のラマンスペクトルを計測します。得られたラマンスペクトルをデータベースと照合することで各成分の同定を行います。これにより、従来のラマンよりも100倍以上の超高精度で判別するとともに、複雑な構造を持つ化合物の計測および未知成分の検出などに貢献します。
2. 「すっきり」整理/「かんたん」操作:データの一元管理と直感的な操作
LCとラマンをつなぐ専用ソフトウェア「LiChRa(リクラ)」を開発しました。「LiChRa」は装置を一括制御するだけでなく、LCとラマンでそれぞれ得られたデータや試料情報を紐付け、一元管理します。また、シンプルかつ直感的な画面構成で、初心者でも分かりやすい操作を可能としました。計測結果などデータの一括閲覧や検索も容易です。
3. 多種多様な計測アプリケーションの展開
本製品では、早稲田大学理工学術院の竹山春子教授を交え、三者共同でライフサイエンスやバイオサイエンス市場向けのアプリケーションを開発しています。産学連携のシナジーも活かし、様々な計測シーンにおける課題を解決します。
また、島津製作所と堀場製作所は、「LC-Ramanシステム」による合成樹脂の構造解析手法を開発しました。
分野 | アプリケーション |
---|---|
ヘルスケア | ・バイオマーカー探索 ・生体中成分の分析 |
医薬 | ・低分子医薬品の構造異性体分析 ・抗体医薬品凝集体や修飾基解析 |
ライフサイエンス | ・微生物代謝物分析・探索 (代謝物データベース構築、新規物質探索) ・培地成分の分析 |
食品 | ・糖類、脂肪酸の組成比分析 ・新規機能性成分の探索 |
化成品 | ・合成化合物の構造推定、不純物評価 ・化粧品などの成分構造変化分析 |
希望販売価格
「LC-Ramanシステム」は、島津製作所が製造するLCと堀場製作所が製造するラマン並びに専用ソフトウェア「LiChRa」を組み合わせた複合システムです。本システムは両社からご購入いただくことができます。
製品名 | 希望販売価格(税抜) |
---|---|
LC部 | 1,600万円~ |
LC用ソフトウェア「LabSolutions」 | 140万円~ |
ラマン | 2,750万円~ |
「LiChRa」 | 200万円~ |
製品の仕様や付属品の購入などにより、価格が異なることがあります。また、製品の据え付け費は価格に含んでいません。
販売目標
20式/年
お客様により購入されるシステムの構成が異なるため、専用ソフトウェア「LiChRa」の販売目標数としています。
用語解説
高速液体クロマトグラフ:高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography)を行う装置・システム。分離を担う「カラム」にサンプルを導入し、連続的に溶液を流しながらカラムの中で各成分を分離し、その後に続く検出器で検出して各成分の定性や量の計測を行う。
ラマン分光装置:光の性質を利用したラマン分光法による分析を行う装置。試料に光を照射し、そこから発する物質固有の「ラマン散乱光」を検出することで、試料の分子構造や含有成分、応力、ひずみなどを評価することができる。