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2024年1月25日 | プレスリリース 当社グループとワシントン大学が健康寿命延伸に向けた測定技術を開発
質量分析技術を用いた共同研究成果がnpj Aging誌に掲載

島津製作所および米グループ会社SSI(Shimadzu Scientific Instruments, Inc. メリーランド州)による研究チームは、ワシントン大学(Washington University in St. Louis. ミズーリ州)医学部の今井眞一郎卓越教授と共同で、質量分析技術を利用して生体に含まれるニコチンアミド・モノヌクレオチド(nicotinamide mononucleotide、以下NMN)の精密定量を可能にする新技術「dimeLC-MS/MS」を開発しました。本技術は、老化研究の前進と健康寿命延伸につながることが期待されます。SSIとワシントン大学は、2021年に「質量分析技術によるNMNの定量化」に関する共同研究契約を締結しており、同年から当社の基盤技術研究所も参画しています。「dimeLC-MS/MS」は本共同研究の成果です。

この技術では、酸性水溶液を用いた代謝物抽出法と、仏グループ会社Alsachimにて新たに作製した安定同位体化合物を組み合わせることで、血しょうや細胞に含まれるNMNおよび関連代謝物の精密な定量が可能になりました。2種類の安定同位体NMNを使用することで、生体試料に含まれるNMNの精密な定量と、抽出作業における誤差の検出が同時に行えます。共同研究には当社製のトリプル四重極型液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-8060」が使用されました。今回の技術開発によって、従来法である有機溶媒による代謝物抽出法と比べ、迅速かつ正確なNMNおよび関連代謝物の定量が可能となり、健康長寿社会の実現への貢献が期待されます。

研究成果は、老化研究で著名なオープンアクセスジャーナルである「npj Aging」(Springer Nature社)に1月2日(米国時間)に掲載されました。

  • ※NMN: NAD(ニコチンアミド・アデニンジヌクレオチド)の合成経路中に生じる化合物。NADは老化の制御に関わる酵素「サーチュイン」を活性化させる働きがあるため、NMNの摂取により老化に伴う組織や臓器の機能低下を抑えられるとみられている

 

論文情報
掲載誌:npj Aging
論文タイトル:Absolute quantification of nicotinamide mononucleotide in biological samples by double isotope-mediated liquid chromatography-tandem mass spectrometry (dimeLC-MS/MS)
著者:Junya Unno, Kathryn F. Mills, Tairo Ogura, Masayuki Nishimura, Shin-ichiro Imai
DOI:https://doi.org/10.1038/s41514-023-00133-1

ワシントン大学 医学部 今井眞一郎 卓越教授のコメント

「この度、島津製作所の基盤技術研究所および米国SSIの皆様との共同研究により、dimeLC-MS/MSを開発することができ、NAD研究分野における長年の課題であった、NMNおよび関連物質の精密絶対定量が可能になったことを、大変嬉しく思います。これからはこの方法を用いて、ヒトにおけるNMNおよび関連物質の動態を精密に測定していくことが、非常に重要な課題となると思います。」

SSI New Strategy部門ディレクター 西村雅之のコメント

「今井教授の研究グループに研究者を派遣して実施した共同研究の結果、体内のNMNおよび関連化合物の濃度を正確に測定することが可能となりました。本手法が、製薬を中心としたヘルスケア関連分野における研究開発を加速するのに寄与できればうれしく思います。」

ワシントン大学との共同研究に用いられた高速液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-8060」 

ワシントン大学との共同研究に用いられた高速液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-8060」

 

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