ニュース

島津製作所は、Activated Research Company, LLC（米国ミネソタ州、以下ARC）からガスクロマトグラフ（GC）用触媒マイクロリアクター（以下、マイクロリアクター）事業を買収しました。

グリーントランスフォーメーション（GX）領域では、カーボンニュートラル（温暖化ガス排出量実質ゼロ）に向けた水素やバイオ燃料などの新エネルギーへのシフトや、二酸化炭素（CO₂）の回収や活用の研究が進んでおり、これらの成分を評価・分析するためのGCの需要が増加しています。GX領域における新技術の研究では、測定対象成分に応じた複数の検出器が用いられ、GCシステムの装置構成が複雑になる傾向があります。また、無機ガス類の高感度分析に使用される専用の検出器では、供給が不安定かつ高価なヘリウムガスが必要という課題もありました。マイクロリアクターは、汎用的なGC検出器（FID）では感度が得られにくいCO₂等の成分に対し、メタン（CH₄）化などの化学反応を実現する小型の触媒反応器です。FIDとの組み合わせにより、分析の高感度化や装置の簡素化、運転コストの低減を容易に実現します。

ARCは、GC用の触媒マイクロリアクターの優れた技術力と製造ノウハウを持つ、北米の研究開発型スタートアップで、当社とは2016年以来取引関係にあります。当社は、本買収により、ARCからマイクロリアクター2製品（JetanizerおよびPolyarc）の関連特許、製造ノウハウ、既存顧客への販売権を含む事業に関連する資産を譲り受け、2024年春以降の販売開始、2025年以降の2製品の完全内製化を目指します。JetanizerはFID内部に導入可能なサイズのマイクロリアクターで、例えば従来2種類の検出器が必要だったCO₂やCH₄などの温室効果ガスの分析がFIDのみの装置構成で一斉分析が可能となり、さらにヘリウムガスを使用することなく対応できるようになります。また、Polyarcは、Jetanizerの特長に加え、脂肪酸メチルエステル・含酸素成分等のバイオ燃料中の成分やクリーンな化学原料として利用が期待されているギ酸をFIDで高感度かつ高精度に定量可能とするマイクロリアクターです。

Jetanizer（左：製品写真、右：FID内部のジェット部に搭載される）

Polyarc（左：GCへの搭載例、手前がPolyarc、右：各ユニットとの接続図）

当社は今回の事業買収により、マイクロリアクターの製造拡大と品質安定化を実現して、GCとマイクロリアクターを組み合わせたGCシステムのラインナップ強化や総合的なアフターサポートの提供を進めます。特にGX領域での研究に取り組まれているお客様に対して、当社グループの販路を活用してグローバルな製品・サービスを提供します。また、マイクロリアクターを用いた分析法の市場導入を進めていく活動の一例として、世界最大規模の業界規格化団体である米国試験材料協会（ASTM International）での分析規格化を推進します。これらの活動を通して、様々な企業との協業や技術の獲得を進め、中期経営計画で注力するGX領域における販売拡大につなげます。

左端がARC CEO Dr. Andrew Jones 、左から２番目が島津製作所GCプロダクトマネージャー武知亮

ARCの概要