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2023年7月3日 | プレスリリース 世界初の細胞外小胞用イムノクロマトキットの開発に協力
大日本塗料が国内で販売開始へ

島津製作所は、大日本塗料株式会社(以下、大日本塗料)が7月25日に国内で先行発売する「Exorapid-qIC 細胞外小胞用イムノクロマトキット(CD9)」の開発に協力しました。本製品は、「細胞外小胞」(Extracellular Vesicles:EVs)の一種であるエクソソームをターゲットとしたイムノクロマトキットとしては世界初となります。大日本塗料製の金ナノプレートを抗体に結合させた「金ナノプレート標識抗体」、サンプル溶液を含ませ、エクソソームを捕捉させる「イムノクロマト試験紙」、試験紙を洗浄する「洗浄液」などから構成されています。当社は、本製品の開発において、検出対象のEVsの選定、エクソソーム検出系の最適化・評価などを担いました。イムノクロマトキットを用いると、試験装置にかかる初期費用が抑えられるうえ、検査時間は45分となり従来の約5分の1に短縮できます。

EVsは、細胞から分泌される小胞体で、大きさや産生機構によって分類されます。その中でも直径約100nm前後の「エクソソーム」は、血液や尿などに豊富に存在します。分泌元の細胞に由来する様々な情報を含むことから、診断用途でのターゲット物質として研究が進んでいます。例えば、がん細胞(悪性腫瘍)から分泌されるエクソソームには、がんの早期診断での利用可能性があります。エクソソームによるがん診断は、従来の組織生検と比較し患者への侵襲性が低く、MRIなどの画像診断より安価です。また、エクソソームは医療材料としても注目されています。再生医療で使用される「間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell:MSC)」から分泌されるエクソソームに、疾患や創傷の治癒能力があると報告されており、海外では人体への投与による臨床試験が開始されています。

一方、エクソソームの研究に用いられる分析は、工程が煩雑だったり高価な分析装置が必要だったりするといった課題があります。例えば、ELISA法では実験に数時間かかり、ナノトラッキング(NTA)法の装置価格は非常に高価です。そこで、大日本塗料と島津製作所は、迅速・簡便な検査手法として、イムノクロマトグラフィー(Immunochromatography;IC)法に着目しました。IC法は毛細管現象を応用した免疫測定法で、妊娠やインフルエンザウイルス診断などで用いられています。

本製品は、サンプル溶液と、大日本塗料製の金ナノプレートを抗体に結合させた「金ナノプレート標識抗体」を含む溶液の2種類を試験紙に含ませてエクソソームを検出します。サンプル溶液がエクソソームを含む場合(下図試験例B)では、試験紙上にTestとControlの2本のラインが出現します。検査時間は全工程で45分で、迅速に評価できます。

「Exorapid-qIC」による試験の様子 (左:試験中、右:試験後)

「Exorapid-qIC」による試験の様子
(左:試験中、右:試験後)

大日本塗料と島津製作所は、2017年から、赤外線吸収用途や診断薬、検査薬用途で大日本塗料が開発を進めてきた貴金属ナノ粒子のライフサイエンス分野への応用について共同研究しており、本製品はその成果の一部になります。両社は今後も、他のEVsを検出できる新たなイムノクロマトキット、技術の開発に取り組んでまいります。

  • ※ 参考文献:落谷孝広, 吉岡祐亮「医療を変えるエクソソーム -生体機能から疾患メカニズム、臨床応用まで」(化学同人, 第1版第1刷, 2018年8月25日発行)

製品概要

製品名 「Exorapid-qIC 細胞外小胞用イムノクロマトキット(CD9)」
定価 85,000円(税別)/1キット(33テスト入り)
目標販売数量 初年度40キット
  • 注意:「Exorapid-qIC 細胞外小胞用イムノクロマトキット(CD9)」は研究用製品です。医薬品医療機器法に基づく体外診断用医薬品あるいは医療機器として承認・認証等を受けておりません。

 

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