電食問題を解決するセラミックスベアリングの製造用工業炉

電動化対応ソリューション | 他の部品関連

温室効果ガスの排出を実質ゼロにする、「カーボンニュートラル」の実現に向け、自動車業界では電動化の取組みが加速しています。電気自動車には大容量の電気モーターが使用されていますが、それを制御する高周波電圧スイッチングなどの影響によって、ベアリングなどの周囲の金属部品で放電や電流漏れによる劣化・浸食が促進されることが大きな課題となっています。

需要が急拡大するセラミックスベアリング

上記のような課題に対して、ベアリングなどの金属部品を電気絶縁性が高いセラミックス部品に置き換えるという解決策があり、世界的な電動自動車市場の拡大に伴いセラミックスベアリングの需要も拡大してきています。また、セラミックスベアリングは、電気絶縁性以外にも以下のような付加価値があります。

  • 金属部品よりも軽量なので、電気自動車の大きな課題である航続距離を向上させることができる。
  • 摺動性が高く、金属部品のように潤滑油を必要としないため、潤滑油不足による急速な劣化や浸食などが起きにくい。
  • 潤滑油の不使用により、周囲の部品を汚染しないため、メンテナンスや部品交換の頻度が下がる。

またセラミックスは、材料や焼結条件などによって光学的、電気的、磁気的、化学的、熱的特性などの様々な機能を付加することができ、これらはファインセラミックスと呼ばれています。ファインセラミックスの種類は多岐にわたり、最適な物性値を備えたファインセラミックスを使用することで、厳しい設計仕様を満足することが可能となります。

セラミックス素材の製造工程に欠かせない焼結

セラミックス製品は、粉末状のセラミックスにバインダー*1を混ぜて成形、脱脂後に高圧・高温下で焼成を行います。この焼成過程で、バインダーや水分が除去され、粉末粒子同士が融合し、空隙が減少して固まります。島津製作所の工業炉は、温度と圧力の制御精度を特長としており、車載用セラミックス部品の分野では、CPU放熱基板、モーター軸受け用ベアリング等の用途で多数の実績があります*2

*1バインダーとは、結合材(材料)を意味し、樹脂、あるいはセメント上の物質の一種で、粒子と共に保持して機械的強度、均質接合性、固化、表面被覆の粘着性を向上させます。セラミックスやMIM、超硬業界では、結合材のみを示すのではなく、同時に混合して使用される滑材や可塑剤を含んだ複合系のものをいう場合が多いです。

<参考>
株式会社島津製作所 “真空熱処理炉の基礎知識”

【 図1 セラミックス製品例:パワーデバイス 】

【 図2 セラミックス製品例:ベアリング 】

高温・高圧で焼結を実現する島津製作所の工業炉

セラミックスは、1,800℃前後の高温下で、10気圧程度の圧力で一次焼成されます。温度と圧力が不安定だと、十分な強度や特性が得られず、空孔が残留することがあります。特にファインセラミックスにおいては、機械的強度や化学的安定性などの高度な機能を持つ反面、三次元的に強く化学結合しているため、高いレベルの焼成技術が必要不可欠です。

島津製作所の工業炉は、独自の炉内構造により以下の特長があり、多くのお客様から高い評価を得ています。

  • 炉内温度と圧力を高精度に制御できるため製造物の品質が高い。
  • 炉内の温度ムラが少ないため歩留まりが良い。
  • タイトボックス方式を採用しており、処理物より発生するガスやバインダー等による炉内の汚染を最小限に抑える。

【 図3 タイトボックス方式とは(工業炉の基礎知識より引用) 】

お客様のパートナーとしてオーダーメイドで製造

お客様が求める条件は多種多様です。島津製作所では、温度、圧力、サイズやレイアウトなど、お客様の要求仕様に合わせて一品一様で装置を設計、製造しています。様々な条件に柔軟に対応でき、導入しやすさも特長としています。
工業炉は、今後の実用化が期待されるパワーモジュール用セラミックス放熱基板、全固体電池の負極材、航空機エンジンに使用されるセラミックス繊維等の焼成にも利用が期待されるなど、次世代モビリティ分野の今後の発展を支えます。<

*2工業炉は島津産機システムズ株式会社にて製造・販売しています。

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