ライトガイド技術による大投影・
コンパクトな車載ヘッドアップディスプレイの実現
モビリティの電動化と高効率化

2022年5月12日更新

運転中にコックピットのディスプレイに目をやることで、進行方向から視線が逸れることを無くすために、進行方向の風景の中に様々な画像情報を投影するのが、ヘッドアップディスプレイ(Head Up Display:HUD)です。現実の世界に仮想空間を作り出すこの技術は、拡張現実(Augmented Reality:AR)と呼ばれ、ドライバーに安全・快適と新たな楽しみを提供します。

ドライバーに違和感を与えない仮想空間は「より大きな表示領域」「高品質な画像」を必要とし、それに向けた開発や製品化が進み、AR-HUDの普及を促進しています。島津製作所では、ヘッドアップディスプレイの大画面化を省スペースで可能にするライトガイド技術を開発しました。

ヘッドアップディスプレイの
表示領域拡大の課題

ヘッドアップディスプレイは、光学系のスペースを小さくするために、映像の光を折り返す部分にミラーが使われています。また、ヘッドアップディスプレイで投影する映像を大きくするには、光束(注1)を拡げる必要があります。そのため、従来のヘッドアップディスプレイで投影する映像を大きくするには、大きな光束をミラーで折り返すために、ミラーのサイズや光束の折り返しスペースが大きくなります。その結果、光学系が大きなスペースを取ることになり、スペースが限られている車の中に搭載することが難しくなることが大きな課題となっていました。

この課題に対し、映像の光を平板の一部から取り込み、広い平面から照射することで光束を拡大する「ライトガイド」を採用することで、ライトガイド入射前までの光束を小さくし、ミラーのサイズや光束の折り返しスペースを小さくします。その結果、光学系を小さくすることができ、省スペースでの大画面化が可能です。

注1:光束=光線が存在する領域

ライトガイド技術での課題解決

島津製作所では、ライトガイド技術を用いたヘッドアップディスプレイでこの課題を解決しています。

従来のヘッドアップディスプレイ

①表示器・光源から照射される「画像」を、②ミラー光学系(反射ミラーと拡大ミラーで構成)で拡大し、③ウインドシールド(WS)に大きく投影します。
このウインドシールド(WS)は反射像がドライバーの眼に入る様設置されており、その像が視線の先(遠方)に投影され見えるのがヘッドアップディスプレイの原理です。

  • 【図1 従来方式の自動車用HUDのイメージ】

従ってミラー方式で表示領域の拡大を行うことは、光束の拡大に伴い表示器・ミラー等を設置するスペースの増大を招きます。

ライトガイド方式のヘッドアップディスプレイ

これに対しライトガイドは光束を拡大することができるため、表示器・ミラー等を設置するスペースを小さくできることがメリットです。
以下に島津製作所が航空機用に開発したライトガイド方式のヘッドアップディスプレイの構成をご紹介します。
従来の光学系に、ライトガイドが組み込まれています。

  • 【図2 航空機器用HUD(ライトガイド方式)の構成】

ライトガイドを、自動車用のヘッドアッディスプレイに適用する場合、同様に表示器・ミラー等を設置するスペースを小さくできます。

  • 【図3 自動車用HUDのイメージ】

ライトガイド技術

  1. ①表示器の情報(入射光束)を入射部から取り込みます。
  2. ②光は全反射を繰り返してライトガイド内を伝搬していきます。
  3. ③伝搬していった光は、複数の位置(出射部)から出射します。
  4. ④一つの光線が複数本に増えることで、拡大された光束が出射されます。

このため、投影する映像を大型化しても、HUDユニット全体をコンパクトにすることができ、省スペースでの大画面化が可能になります。

  • 【図4 ライトガイド技術の仕組み】

島津の特長:太陽光等の影響の少ないプリズム方式ライトガイド技術

ライトガイド技術にはプリズム方式とホログラム方式がありますが、島津では、以下の理由からプリズム方式を採用しています。
大きな表示領域を得るためには、広い出射部が必要ですが、広い射出部からは外光(太陽光、照明光、等)が入りやすくなります。ホログラム方式では外光の影響が画質を落とす要因になります。一方、プリズム方式は、外光の影響を受けにくいという利点があり、大きな表示領域の実現に有利です。

【図5 プリズム方式とホログラム方式の比較】
 島津プリズム方式ホログラム方式
ライトガイドからの光束の出射原理ライトガイドに形成した多数の反射面・屈折面で、光束を反射・屈折ライトガイドに形成したホログラム面で、光束を回折
画質外光の影響を受けにくい太陽光や夜間照明の光が多方向に反射して邪魔な光が増える
生産性より高い生産技術が必要量産が比較的容易

島津製作所が培ってきた航空機用ヘッドアップディスプレイ技術

ヘッドアップディスプレイは航空機搭載で開発が進んだ技術です。島津製作所では1980年代より防衛省向け航空機用HUDの開発、製造の実績と、ライトガイド技術を持っています(*1、*2、*3)。

モビリティへの実装を目指して

島津製作所では、航空機用のヘッドアップディスプレイ向けに開発してきたライトガイド等の革新的技術を、次世代のモビリティを含め広く活用する技術として展開することを見据えています。

参考文献