技術コラム

MALDI-MSのネガティブイオンモードによる糖鎖分析

岩本 慎一

英国オックスフォード大学のDavid J. Harvey教授が、糖鎖の質量分析に関するレビューにおいて、当研究所の論文を多数紹介しています。(David J. Harvey: Mass Spectrometry Reviews 39, 589-679. 2020)

紹介されたのは、Fukuyama, Kaneshiro, Sekiya, Nishikazeらがそれぞれ執筆した、MALDI-MSによる糖鎖解析に関する論文です。MALDIのマトリックスや添加剤、糖鎖の誘導体化法等に関する研究成果を報告したものです。

Nishikazeの論文は特に多数(主筆9報!)紹介されておりその主な内容は、1)糖鎖の誘導体化による高感度化、2)糖鎖のネガティブイオンMS/MSパターンによる分岐鎖の解析、3)シアル酸糖鎖の誘導体化による異性体識別、などです。

糖鎖はタンパク質とともにMALDIが得意とする分析対象です。当研究所では2003年の設立以来、MALDI-MSによる糖鎖分析技術の研究開発を行っています。

[Review information] : David J. Harvey: ‟Negative Ion Mass Spectrometry for the Analysis of N-Liked Glycans”: Mass Spectrometry Reviews, 39, 589 -679. 2020: DOI 10.1002/mas.21622

[Reference information] : Takashi Nishikaze: “Sensitive and structure-informative N-glycosylation analysis by MALDI-MS.; Ionization, fragmentation, and derivatization”: Mass Spectrometry, 6: A0060. 2017: https://doi.org/10.5702/massspectrometry.A0060

MALDI-MSのネガティブイオンモードによる糖鎖分析

本コラムはLinkedInで2020年10月に掲載したものです。所属・肩書は掲載当時のものです。

岩本 慎一(いわもと・しんいち)

田中耕一記念質量分析研究所 副所長、博士(学術)。
1991年、株式会社島津製作所に入社。生体計測の研究開発チームにて、近赤外脳機能計測装置の開発や応用研究を行う。2003年の田中耕一記念質量分析研究所設立と同時に異動し、主にMALDI-MSの要素技術開発、応用研究開発に携わる。2014年、田中耕一記念質量分析研究所 副所長就任。現在の研究テーマは新しい質量分析装置に関する要素技術開発、微生物分析の手法開発、がんやアルツハイマー病の疾患バイオマーカーに関する研究開発など。

田中耕一記念質量分析研究所