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東京女子医科大学病院

ジェネラリストが先端医療を支える

ジェネラリストが先端医療を支える01

東京女子医科大学病院

1900年創立の東京女医学校の附属病院として1908年に設立。2010年、東京災害派遣医療チーム(DMAT)の指定医療機関となる。厚生労働省より承認されている先進医療を数多く手がけ、国内トップレベルの高度な医療を提供している。

高度な医療を提供し、日本をけん引する東京女子医科大学病院。
そこには、日本の医療を俯瞰し、医療レベルの底上げに挑み続ける放射線科医の情熱がある。

高度な医療を実現する先端的な装置群

 1900年(明治33年)、前身の東京女医学校の開設以来、116年の歴史をもつ東京女子医科大学病院。42の診療科、8つの附属医療施設を擁し、国内屈指の規模を誇る。
次世代型補助人工心臓の臨床治験をはじめ、14種の先進医療にも取り組むなど、日本の医療をけん引している。
同病院が提供する高度な医療の背景には、日本を代表するような医師の存在だけでなく、その最新鋭の装置を時代時代において、積極的に導入していることがある。それらは見えない体内を映し出す目、手術を助ける手となって、多くの患者さんの命を救ってきた。
2014年には、さらなる医療の充実を目指して、画像診断装置群を一気に入れ替えるという“大手術”を行った。心臓の手術などに使われる血管撮影システムや、様々な部位への活用範囲が広く、一回の撮影で数十枚の連続断層画像データが得られるトモシンセシス機能を搭載した一般撮影装置RADspeed ProEDGE package、X線TVシステムSONIALVISION safire 17など、島津製作所の装置も、複数台採用された。これにより、撮影数が一日200枚以上という大量の検査がスピーディにこなせるようになった。
この大ナタの指揮をとったのが、画像診断学・核医学教室講座主任を務める坂井修二副院長。臨床や画像診断に加え、装置にも精通した坂井副院長は、画像診断装置メーカーのご意見番としても注目されている。

ジェネラリストを目指して

鹿児島大学医学部に在学中、超音波診断を学び、画像診断に興味を抱いた若き坂井副院長は、九州大学医学部の放射線教室に先進的な講座があると知り、6年生の時に実習に参加した。
「いろいろな臓器を勉強しながら、実際に超音波をはじめとする画像診断装置を使った診断を繰り返し学んでいきました。すると、自分の技量次第で、多くの情報を引き出せた。これは自分に向いている、とやりがいを感じましたね」
この実習がきっかけとなり、放射線科医としてスタートを切った。しかし、たとえ大きな病院であっても、なかには放射線科医がわずか2人か3人と、病院の規模に対して極端に少ない場合があり、多忙な日々を送ることも少なくなかった。だが、この環境が、現在の坂井副院長の礎を築いた。
「私自身は胸部が専門だったのですが、人手不足で専門領域にこだわっていられませんでしたし、いろいろな画像診断装置の画像を読影しなければなりませんでした。自然と、どんな装置でも読め、臓器や領域、病気にかかわらず読影できる、一流のジェネラリストになって、さらに得意分野を増やしたいと思うようになりました」
理想の医師像を目指し、坂井副院長は、さらに努力を積み重ねていく。画像診断例レポートの「症例台帳」から参考になりそうな症例や所見をピックアップし、その症例の画像を幾度となく調べた。
こうしていくなか、画像診断装置もデジタル化の時代が到来。九州大学病院時代には、胸部デジタル撮影装置の画像処理の原理について毎月勉強会を行い、徹底的に学んだ。
「画像処理の条件は、臓器や病気によって、また、患者さんの体形や年齢など、条件によって実にさまざまです。この時徹底的に勉強したおかげで、画像を見れば、この装置はどんな画像処理をしているか、患者さんによってどんな処理をすべきか、わかるようになりました」

妥協はしない

以後、臨床と画像診断の両方の知識を持つ貴重な存在として、また中立的な立場で数々の画像診断装置の開発にアドバイスをするなどの支援に携わってきた坂井副院長。その知識は、国内でも最大規模である同病院のIT化を進めるうえでも欠くことのできないものとなっている。画像診断装置の一斉更新に合わせ、画像データをスピーディに読み込み、一括管理し、必要に応じて医師が簡単に閲覧できるシステムにもさまざまなアイデアを提案。患者さんの待ち時間と医師の手間を大幅に軽減することができた。
そして坂井副院長は、臨床医でありながら、画像診断の可能性を一番知る責任ある立場として、今後の画像診断装置の未来のために、さまざまなメーカーにアドバイスし続けている。
「どんな症例でも、各社の装置の個性に影響されない統一した画像が撮れる装置を目指してほしい。統一できれば、患者さんにも安心をご提供できますし、病院の負担も大きく減らせます」
さらに自身の経験を活かし、次世代を担う放射線科医の育成にも力を惜しまない。
「それぞれの医師が責任ある立場であることを自覚するのは当たり前ですが、どんな臓器や病気、検査機器でも力を発揮できるジェネラリストになること。その上で得意とする専門領域を持つ。関連する科の医師から信頼されるスペシャリストを目指すことは、医療全体の底上げにつながり、患者さんの安心にもつながります」
「検査の際、予測できる病気を見つけるのは当たり前です。さらに治療すべき病気が潜んでいないかを探り、卓越した診断で、結果、悪いところは全部治したと安心して患者さんに退院していただく。それがスクリーニングとしての画像診断や放射線医の役割です。医師は職人と同じ。このくらいでOKと思ったら終わりなんです。現状に決して甘んじることなく、追求し続けていきたいですね」
これからも尽きることのない情熱で、日本の医療の先端を切り拓いていく。

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ハイブリッド手術室で稼働する血管撮影システムと中央放射線部 小島一義先生

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一般撮影装置「RADspeed Pro EDGE package」と中央放射線部代表技師長 江島光弘先生

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東京女子医科大学病院 管理部門担当 副院長
東京女子医科大学 画像診断学・核医学教室 講座主任

坂井 修二(さかい しゅうじ)

鹿児島大学医学部卒業。九州大学病院放射線科に入局後、計11病院で画像診断医として勤務。2010年、東京女子医科大学初代画像診断学・核医学教室 講座主任に就任し、教鞭も執る。2014年より現職。