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時事の科学

エネルギー問題の未来を占うシェールガス

近年「シェールガス革命」という言葉が、世間をにぎわせています。エネルギー勢力図を大きく書き換えるとされるシェールガス。いったいどんなガスなのでしょうか。

シェールガスも従来の天然ガスも、成分的にはほぼ同じ。できる過程も変わりません。ただひとつ違うのは、それが産出される場所。従来の天然ガスが、主に砂岩層から産出されるのに対して、シェールガスは、硬くはがれやすい頁岩(けつがん=シェール)層の割れ目に閉じ込められています。頁岩は泥岩の一種で、水中で水平に堆積した泥が固まってできたものです。薄く割れる性質が本のページのようだということから頁岩と命名されました。

石油やガスは、生物由来の有機物が、地下深くで地球内部の熱によって化学変化を起こした結果、生成されると考えられています。水中に堆積した砂でできた砂岩、泥でできた泥岩は、プランクトンや藻の死骸を多く含んでおり、地下数千メートルで何億年も温められるうちに、それらがガス化したのです。

在来型の天然ガスが貯留されている砂岩の層は、比較的粒子が粗く、その間を縫ってガスが移動し、地層が褶曲してできた隙間に溜まり、ガス田を作りやすいのに対して、頁岩は粒子が細かいために、ガスがその場から移動することができず、岩石の中にとどまっていました。これがシェールガスです。

その存在は、百年以上も前から知られていましたが、採掘に掛かる費用が莫大すぎて、採算がとれず、世界中の多くの地域で眠れる資源とされてきたのです。

ところが近年、アメリカを中心に採掘技術の革新が進み、状況が一変。シェール層を水平に掘り進める水平掘削法や、水の力でシェール層を破壊してガスを取り出す水圧破砕法が発明され、十分に採算のとれる生産が可能になったのです。

最新の調査によれば、世界のシェールガスの採掘可能な埋蔵量は、206・7兆立方メートル。従来型の天然ガスを含めた総埋蔵量の32%を占めます(2013年米エネルギー情報局発表)。国別では中国が約31兆立方メートルともっとも多く、アルゼンチンの約22兆立方メートル、アルジェリアの約20兆立方メートル、アメリカの約18兆立方メートルと続きます。技術導入が進むアメリカは、日本へのシェールガス輸出に関する認可を出すなど、エネルギー資源の輸出に慎重な従来の姿勢を見直し、積極的なエネルギー政策に転換しようとしています。

もっともこの数字は、頁岩層の地中分布から推定したもので、採算性などは考慮しておらず、実際に産出できるかは未知数。さらなる詳しい調査と、より効率的で安全な採掘法の開発が待たれています。

「実在環境」で見られるインパクト