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国連大学の環境プロジェクトを継続支援

~アジアの環境保護と技術者育成のために~

アジア地域の環境保全を目指す

国連大学では1996年から「東アジア地域の環境モニタリングと分析―技術移転と環境管理」プロジェクトを実施している。持続可能な地球環境を作り出すためにアジア10カ国の沿岸環境の化学汚染物質をモニタリングするというプロジェクトであり、これまでに揮発性有機化合物(VOC)、環境ホルモン、残留性有機汚染物質(POPs)などをテーマにした調査研究が、3年を“1期 ”としてのべ5期にわたって行われてきた。

「科学技術で社会に貢献する」を社是に掲げる島津製作所は、長年培ってきた専門技術を活用するべく96年の開始当初からから同プロジェクトを全面的に支援しており、液体クロマトグラフ質量分析計などの自社製の機器を提供するほか、国際シンポジウムの開催サポートや研究者の分析技術トレーニングなどを行ってきた。この15年間で各国の環境を細かくモニタリングできるようになったのはもちろん、詳細なデータ分析技術の向上、アジアの主要研究機関の人的ネットワークの構築、新分析方法の開発とデータの蓄積といった確かな実績が残されるまでになった。

次期計画では新機種を貸与

2012年秋には第6期となる3カ年計画『アジアにおける残留性有機汚染物質(POPs)の監視と管理 ― PFCsモニタリング― 』がスタート。島津は継続支援を決定し、2012年11月12日に国連大学本部(東京・青山)において、中本晃代表取締役社長と国連大学のコンラッド・オスターヴァルダー学長(当時)の最高責任者2名による6期プロジェクト支援に関する協定書の調印式が行われた。

中本社長は、調印式の席上「確立された研究者同士のネットワークがさらに強固なものとなり、分析技術をより高いレベルへと向上させることができると期待しています」と語り、従来にも増して厚い支援を約束。第6期は、環境水中のPFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)およびPOA(パーフルオロオクタン酸)の汚染状況を調査・モニタリングすることを目的としており、島津は今回、より分子量の大きな化合物を監視できる最新式の高速液体クロマトグラフ質量分析計(LCMS)を提供。また、島津の環境分析に関わる専門的な技術とノウハウを活かし、これまで同様、人材育成も行っていく。

国連大学ではこのプロジェクトでの成果を、アジア諸国をはじめとする新興国に普及していく計画だという。

第1期プロジェクト(1996~1999年)
東アジア地域の環境モニタリングと分析
―技術移転と環境管理―

東アジア地域の飲料水、土壌、食糧、大気などに含まれる化学汚染物質の濃度監視に必要な分析技術の標準化を目的とし、食品中の農薬、飲料水や大気中の揮発性有機化合物(VOC)等をモニタリングし調査研究した。

第2期プロジェクト (1999~2002年)
東アジアの沿岸水域における環境モニタリングと管理
―河川・沿岸水域における環境ホルモン―

東アジア地域における環境汚染度の監視、汚染物質の分析を目的とし、河川水に含まれる環境ホルモン(農薬、ビスフェノールA、アルキルフェノール、フタル酸)をモニタリングし調査研究した。

第3期プロジェクト (2002~2005年)
東アジア水圏における環境モニタリングと管理
―東アジア水圏におけるPOPsモニタリング―

東アジア地域における残留性有機汚染物質(POPs)の抑制と防止を目的に、河川・土壌における汚染状況調査・モニタリングを実施するとともに、参加研究機関の分析技術の向上と人的ネットワークの強化を図った。

第4期プロジェクト (2005~2008年)
アジア沿岸水圏における環境モニタリングと管理
―アジア地域におけるPOPsモニタリング―

アジア地域における残留性有機汚染物質(POPs)の抑制と防止のため、甲殻類・魚類などの水生生物の汚染状況調査・モニタリングを実施するとともに、新規2カ国を含めた参加研究機関の分析技術の向上と人的ネットワークの強化を図った。

第5期プロジェクト ( 2009年1月~2011年12月)
アジア沿岸水圏における環境モニタリングと管理
――アジア地域におけるPCBを含むPOPsモニタリング――

アジア地域における残留性有機汚染物質の抑制と防止のため、環境水中のPCB、底質中の臭素系難燃剤の汚染状況調査・モニタリングを実施するとともに、参加研究機関の分析技術の向上と人的ネットワークの強化を図った。