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時事の科学

レアメタル 都市鉱山を掘り起こせ

レア(希少・珍しい)なメタル(金属)と書いてレアメタル。文字通り世界中でわずかしか産出されない金属のことです。リチウムやニッケル、コバルト、プラチナなど、日本では31種類が指定されています。
使われる量こそ少ないものの、産業上非常に重要な金属です。少量を加えるだけで、部材の強度や耐熱性を大きく向上させたり、エネルギー密度や電気の伝導性を飛躍的に高めるため、電子機器や液晶画面、電池などの電気製品や自動車部品には、これがないと作れないものが少なくありません。リチウムはリチウムイオン電池の原料として、プラチナは自動車の排気ガスの浄化触媒として不可欠なほか、次世代エネルギーの一翼を担う燃料電池の反応触媒としても注目が集まっています。
しかし、そもそも産出される量が少なく、近年のハイテク産業向けの需要拡大で、供給が逼迫。価格は軒並み数倍に上昇しています。産出国に大きな偏りがあるのも特徴で、たとえばプラチナは南アフリカで約75%、ロシアで約17%が産出されるほかは、どの国も数パーセント以下で、政治情勢の変化によっては、供給が途絶える恐れもあります。
そこで注目されているのが「都市鉱山」です。携帯電話や電化製品には、レアメタルやそのほかの希少な金属が大量に使われていますが、使われなくなるとそのまま捨てられたり、家庭で眠ったままになってしまうケースが少なくありません。一台一台に含まれる量はわずかでも、集めれば相当な量が眠っていると推測されており、物質・材料研究機構の2008年発表によれば、日本には金6800トン(世界の埋蔵量の約16%に相当)、銀6万トン(同約22%)、液晶画面の材料となるインジウムにいたっては約61%にあたる1700トンが眠ったままになっているといわれています。これは、世界有数の資源国に匹敵する規模。日本が将来も工業立国として生き残っていくためにも都市鉱山の有効活用は必須の課題です。
携帯電話やデジタルカメラは、単位グラムあたりのレアメタル含有量が高い「良質石」。不純物を取り除きごく微量の金属を製錬して取り出したり、効率的なリサイクルの仕組みづくりに期待が寄せられています。

プラスチックは腐る
携帯電話に使用される主なレアメタル・貴金属
【液晶画面】インジウム
【カメラ】 ニッケル、金
【IC・LSI】 金
【イヤホンジャック】 金
【振動モーター】 レアアース
【バッテリー】 リチウム、コバルト
【コンデンサ】 パラジウム、ニッケル、タンタル
主なレアメタルの使用例
レアアース ハイブリッド車のモーターなどに用いる高性能な磁石に使用
プラチナ 自動車や重機の排ガス浄化用触媒および化学プラントに使用
リチウム リチウムイオン電池に使用
タングステン ドリルやカッターなど超硬工具に使用
インジウム 薄型テレビなど液晶画面の透明電極に使用
ガリウム 発光ダイオードに使用

2009年経済産業省発表資料より作成