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(注)所属・役職および研究・開発、装置などは取材当時のものです。

いのちを守る、いのちに迫る

技術を尽くし、心を尽くす

豊橋ハートセンター 鈴木 孝彦 院長

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医療法人 澄心会 豊橋ハートセンター

1999年、「患者様に優しく、温かい真心のこもった医療」を理念に掲げ愛知県豊橋市に開設。24時間救命救急体制を備えた循環器専門病院。年間約5,000例の心臓カテーテル検査・治療・手術を行い、県内はもとより、全国、海外からも患者様が訪れる。2008年に系列病院となる名古屋ハートセンター、2009年に岐阜ハートセンターを開設。

〒441-8530 愛知県豊橋市大山町五分取21-1
TEL.0532-37-3377(代表)

http://heart-center.or.jp/

循環器の専門病院・豊橋ハートセンターには、
全国から、ときには海外からも、多くの患者様が来院する。
高い技術と心のこもった医療に、信頼が寄せられているのだ。

ホテルマンに負けるな

「ホスピタル(Hospital=病院)」の語源は、ラテン語の「Hospes」。「旅人、客」を意味する言葉だ。「ホテル」「ホスピタリティ」の語源も同じ。病んだ人、疲れた人を暖かく迎えるという思想が、言葉の底流に流れている。
豊橋ハートセンターを訪れた人は、まずその温かさに驚かされる。医師はもとより、すべてのスタッフが明るく患者様に「こんにちは」と声をかけ、手を添えて案内する。
「患者様に優しく、温かい真心のこもった医療」という同院のスローガンは、決してただのお題目ではない。
「『ホテルマンに負けちゃいかんよ』とスタッフにはいつも言っています」と言うのは、同院の鈴木孝彦院長。
「病院は、病んだ人が来られるところ。体が弱れば、心も沈むもの。それなのに、声をかけられることもなかったら、疎外感を感じられてしまうでしょう。病院にはホテル以上のホスピタリティが必要なんです。もっとも、病院だろうとホテルだろうと、会った人に明るく声をかけることは、ふつうのことだと思いますけどね」と、笑う。

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名古屋ハートセンターで稼働している、血管造影システム
「BRANSIST safire」

循環器内科のリズム

鈴木院長は、循環器内科の医師として、16年間国立病院に勤務。副院長まで務めたが、いまから10年前、より良い医療を目指し循環器専門病院豊橋ハートセンターを立ち上げた。
「循環器内科で扱う心疾患は、他の病気以上に一刻を争う事態になることが多い。また入院が必要となる基準や、患者様の心理状態も、他の診療科とは異なります。総合病院では他の診療科とリズムが違うので、同じ組織のなかにあると、どうしても限界が出てきてしまう。患者様のためを思えば、やはり専門の施設で対応するべきだろうと考えたんです」(鈴木院長)。
循環器の病気「虚血性心疾患」は血管の内側にプラークと呼ばれるおかゆのような隆起がたまっていくことで起こる。プラークは、長い時間をかけてだんだん血管内の血の通り道を狭め、その結果、心臓に十分な血液が供給されなくなってしまう。治療は、薬を使って症状の改善をはかる内科的治療、開胸して狭くなった血管のバイパス手術をする外科的治療、そして血管内にカテーテルという細い管を通して、バルーンやステントと呼ばれるデバイスを使って狭くなった血管を広げる「経皮的冠動脈形成術(PCI)」が用いられる。外科的手術に比べ患者様の負担が少なく、効果も得られやすいPCIは、長年に渡る技術とデバイスの進歩により、一般的な治療となっている。
鈴木院長の専門もPCI。1983年から、延べ1万例を超えるPCIを手がけたスペシャリストだ。その卓越した技術に対する評価は高く、遠くは海外からも豊橋ハートセンターの治療を求め、足を運ぶ患者様も多くいるという。

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高い技術を広く共有

院長は、PCIなどの診断・治療の様子をライブ中継して、医師、技師らの技術向上を目指すライブデモンストレーションCCT(complex catheter therapeutics)の主宰者でもある。
「ただ技術を披露するだけでなく、お互いがお互いの技術を相互批評して、研鑽する場を作りたい」(鈴木院長)との考えから同調する医師らと始めた学会で、循環器内科に関わる臨床家たちの貴重な情報交換の場となっている。
その高い技術に加えて、豊橋ハートセンターでは、カテーテル検査・治療後に患者様をケアする専用の処置室を院内にもうけた。従来なら2~3日も要していたカテーテル検査は外来で、カテーテル治療は一泊二日で可能にする体制も整えている。
「カテーテルのあとは、出血やアレルギー発作などを起こす恐れもあります。それに即座に対応するためには、通常の病室では不可能です。医療費削減のためにも、質の高い医療を提供するためにも、率先して作りたかった」と鈴木院長は強調する。

医療の質を高めるチーム医療

もちろん、優れた医療は、施設、個人の力だけで実現できるものではない。
「PCIは、医師、看護師、技師など、多くのスタッフの連携が必要なチーム医療です。スタッフの待遇改善はもとより、各人の技術向上、コミュニケーションの強化に細心の注意を払っています」(鈴木院長)。
この充実した体制が、カテーテル検査を年間約3000例、PCIなどの治療を約1300例、外科手術を300例という日本有数の症例実績を実現し、その蓄積が、さらなるスタッフの技術向上に結びついてる。
昨年から今年にかけて、同じコンセプトからなる循環器領域の専門病院「名古屋ハートセンター」「岐阜ハートセンター」を相次いで開設。名古屋ハートセンターでは、島津の血管造影システム「BRANSIST safire」も稼働している。
鈴木院長は、名古屋、岐阜両院の理事長も兼ねることになったが、豊橋ハートセンターの院長にとどまり、指揮をとり、なおかつ臨床医として治療にも一層力を入れている。
「名古屋、岐阜ともにスタッフにも恵まれ、最新の設備が整ったいい病院ができました。その分、豊橋も負けないようにがんばらないと」と腕をまくる鈴木院長。
技術を尽くし、心を尽くす。理想とも言える医療を実践する同院。だが、鈴木院長は力を込めてこう言う。
「ただ患者様の幸せを考えているだけ。ふつうのことですよ」。

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豊橋ハートセンター 院長

鈴木 孝彦(すずき たかひこ)

1973年に岐阜大学医学部卒業後、岐阜大学第二内科、東京女子医大心研内科を経て、1983年より国立療養所豊橋東病院に勤務。副院長を務めた後、1999年5月に豊橋ハートセンターを開設。世界的なPCIのスペシャリストで、CCT世話人、日本心血管インターベンション学会副理事長、日本循環器学会・心臓病学会評議員など、多数の重職を務める。

(注)所属・役職および研究・開発、装置などは取材当時のものです。