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(注)所属・役職および研究・開発、装置などは取材当時のものです。

hospitality 顧客志向の原点へ

顧客を感動させるプレミアムなおもてなし

決してNOといわない

近年、お客様中心思考の広まりとともに、ビジネス界にも「おもてなし」の考え方を取り入れようとする企業の方が増えてきた。おもてなしとはなにか。
ザ・リッツ・カールトン大阪で伝説のコンシェルジュとして多くの宿泊客から賞賛を得た前田佳子氏にその極意を聞いた。

おもてなしとは、お客様が口にされないご要望を、五感を駆使して、あるいは第六感を発揮してキャッチし、スタッフとのチームワークでかなえようとするもの、と私は考えています。コンシェルジュの仕事はまさにそのもので、お客様のホテル滞在を快適するために、あらゆるご要望を感じ取り、お応えしていきます。
あらゆるご要望にお応えするということは、決して「NO」といわないことともいえます。
以前、「あの飛行機を買いたいんだがなあ」と空を飛ぶジャンボジェット機を見ながらつぶやかれたお客様がいらっしゃいました。「からかっているのかしら」とも感じたのですが、ここで「申し訳ございませんが、そのようなことはできません」といってしまったら、お客様を拒絶していることになります。
私は、「素敵ですね。よろしければどの航空会社か、お調べいたしましょうか」といって対応させていただき、飛行機メーカーに電話して、後日、お客様とお引き合わせすることになりました。結果的には駐機場がないことなどで、その話は成立しませんでしたが、夢への扉が開けたということで、お客様には満足していただけました。
どんなに無理と思われることでも、承って実現の可能性を真剣に考える。その過程で納得いただける代替案が生まれるかもしれませんし、お客様の言葉の裏にある真のご要望に思い当たるかもしれません。それが「NOといわないおもてなし」です。
反対に無理な要望に対して「困ったな」という感情を持ってしまうと、それは必ず表情や声に漏れだします。敏感なお客様ならそれだけで腹を立ててしまわれるかもしれません。まずは相手のお話をすべて聞き、ご要望にお応えしますという態度を示すことが大切なのです。
私は、職場は舞台だと思っています。単に、お客様に仕える場所ではなく、自分自身を表現してコンシェルジュという役割に徹する。そして自分を鍛えていけばよい演技ができて、幸せな舞台を踏んでいける、と思います。こうした気持ちの持ち方で、仕事への情熱をかき立て、ひいてはお客様に満足いただけるエクセレントサービスを提供できるように自分をマネジメントできるようになるのだと思います。

伝説コンシェルジュが明かす
プレミアムなおもてなし

著者 :前田 佳子
東京ベイコート倶楽部ホテル
&スパリゾートクオリティ支配人
http://baycourtclub.jp
発行所 :ダイヤモンド社

伝説のコンシェルジュ前田佳子氏の “おもてなし五ヶ条”

1. 決してNOといわない

無理難題と思われることでも、持ち帰って検討を。「お引き受けします」という姿勢が、お客様の心を動かします。

2. 自分たちの都合をお客様に押し付けない

お待たせするときは「少々お待ちください」ではなく「少々お待ちいただけますか」と相手の都合を問う形に。

3. 職場は舞台。服装、小道具にもこだわりを

身だしなみはもちろん、同じメモをとるのでもノベルティのペンなどはダメ。ある程度よいものを使うと、お客様も大事にしてもらっていると感じられるもの。

4. 楽しい気分をいつも持ち続けるために

自分が楽しい気分でなければ、お客様を楽しませることはできない。休日には趣味を存分に楽しみ、出勤時もお気に入りの本などを鞄に一冊いれて。

5. 鏡を持つ

お客様の本音を引き出すには、リラックスした空気が必要。やさしい表情、ゆっくりした声のテンポを作れるよう、常に鏡を携行しチェックを。

(注)所属・役職および研究・開発、装置などは取材当時のものです。