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(注)所属・役職および研究・開発、装置などは取材当時のものです。

いのちを守る、いのちに迫る

地域の健康を守る拠点に

群馬大学医学部附属病院

群馬大学医学部附属病院

1943年に開設。北関東唯一の国立大学附属病院として、地域医療に貢献すると共に、一般医療機関では行い難い高度医療を提供する医療機関として発展を続けている。
(財)日本医療機能評価機構「病院機能評価」認定病院。

〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-15
TEL .027-220-7111(代表)

http://www.med.gunma-u.ac.jp/hospital/

医療画像診断で全国的に高い評価を受けている群馬大学医学部附属病院。
関東北部で有数の規模を誇り、地域医療の核として活動する同病院で、このほど新診療棟が竣工。島津の直接変換方式FPDを搭載したX線装置を導入した。

特色のある病院を

一日最大2400人、平均1900人。
群馬大学医学部附属病院が診察する患者さんの数だ。(2007年実績)県下ではもちろん、周辺県を見渡してもこれだけ大規模な病院は少ない。先進医療での実績も多く、県内はもとより、都心からここを選んで入院する患者さんも少なくない。文字通り地域医療の中核をになう施設だ。昨年の12月、新しい中央診療棟が完成。患者さんにわかりやすい受付案内システムや、明るい診察室などを備え、患者さん本位のさらに質の高い医療を提供する環境が整った。
その新診療棟の自慢の一つが放射線部だ。新診療棟建設に合わせて装置も一新した。一般撮影、血管撮影、X線テレビ、CT、MRI、PET/CT、γカメラなど最新鋭の装置が、34台稼働し、全国屈指の画像診断設備が整っている。
病院が法人化したことに伴い『何か特色を出していかなければならない』と、かねてから病院内で議論が続けられてきた。そのなかで放射線部が提案していた、画像診断装置による検査や治療支援を充実させようという意見が採用されたのだ。
平成17年には、核医学検査の件数で国内トップとなったこともあるなど、もともと放射線部のスタッフの技量も高く、下地は整っていたといえる。

ひずみがない鮮明な画像

意見採用の決め手となったのは、島津の直接変換方式FPD(フラットパネルディテクタ)を搭載した画像診断装置だ。
「2年前、はじめて直接変換方式FPD搭載のX線診断装置で撮影したデジタル画像を見たときの驚きは忘れられません。視野が広いのはもちろんのこと、どこを見てもひずみがない。画像は鮮明で、こうじゃないといかん、と思いました」
同病院放射線部の大竹英則技師長は、そう振り返る。
「デモで撮影した画像を外科の先生たちに見せたところ、いますぐにでも導入してほしいという意見が多数を占めました。画像の質は手術の成否を大きく左右しますから、医師や患者さんにとっても計り知れないメリットがあります」(大竹技師長)
もともと新診療棟建設に合わせて新しいX線画像診断装置が導入されることにはなっていたが、そこに島津の装置はラインナップされていなかった。だが、大竹技師長の言葉に動かされた医師たちの働きもあって、島津の直接変換方式FPDの採用、さらには、大規模なX線診断センターの開設へと話は広がっていった。

求められるサービスの質

こうした経緯を経て、中央診療棟落成に合わせ、島津の直接変換方式FPDを搭載した一般撮影システム「RAD speed safire」を4台、X線テレビシステム「SONIALVISION Safire II」4台の導入が決まった。
だが、最後に高いハードルが残っていた。
同病院では、新診療棟の建設に際して、いっさい休院しないことを決めていた。
「苦しむ患者さんを考えれば、一日でも機能を止めたくない。それは当然です」
そうなると、導入される装置を、完成の日には一斉に稼働させなくてはならない。もちろん、スタッフには、それまでに操作を覚えておいてもらう必要もある。
採用決定から新診療棟稼働まで残された時間は2カ月。通常であればまず無謀とも思える条件だが、島津の営業・サービス・技術は寝食を忘れて奔走。加えて同病院の放射線部の技師たちも、通常勤務に並行して、夜中まで新装置の操作を習得した。その努力の甲斐あって、新棟一斉の臨床開始にこぎつけた。
「これだけの規模の病院でまったく業務を止めずに移行した例はないんじゃないでしょうか。本当によくやってくださったと思いますよ」(大竹技師長)
稼働から数カ月が経過。島津FPDは、現場からも好評価を得ている。
「画像の質ももちろんですが、扱いやすい装置であることも重要です。たとえばこれまで、撮影する患者さんの体位を調整するのに苦労していたものが、装置の撮影位置の移動が軽快で、力を必要としないため、女性の技師でも簡単にできる。撮影の効率化を図るうえでも、患者さんの負担を減らすうえでも、大きなメリットといえるでしょう」(大竹技師長)
もっとも、優れた装置さえあれば、それで十分というものではない。それを支えるサポートの重要性を大竹技師長は強調する。
「まだ導入2カ月目なので、サービスの方に調整をお願いすることも発生しますが、昨夜も診療後に作業を開始し翌朝4時までには修理完了。翌朝の診療に差し支えないように頑張ってくれました。機械ですから故障することはあります。問題は、その時きちんとしたサポートができるかどうかです。満足のいくサポートができるメーカーは決して多くないのですが、その意味でも島津は十分評価に値します」
将来は、関連病院などともネットワークを構築し、撮影した画像をデータベースとして活用したり、画像診断を受け持つなど、デジタルであるメリットを有効活用していきたいと話す大竹技師長。地域医療の苦境が伝えられるようになって久しいが、技師長のアイデアは、患者さんにとっても医療従事者にとっても新たな可能性を切り拓きそうだ。

群馬大学医学部附属病院放射線部 技師長

大竹 英則

2006年4月、群馬大学医学部附属病院放射線部技師長、同大学医学部保健学科臨床准教授に就任。現在に至る。日本核医学技術学会(関東部会理事)、群馬県核医学研究会、群馬Navigation Surgery研究会 世話人。

(注)所属・役職および研究・開発、装置などは取材当時のものです。