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(注)所属・役職および研究・開発、装置などは取材当時のものです。

SHIMADZU GROUP

サービスの流儀

製品のパフォーマンスを常に最高に保つため自社工場まで設立したサービス会社

島津製作所が製造する産業機械を販売すると同時に、保守を受け持つ島津エミット。
ユーザーの要望を常に肌で感じている同社には、サービスについての強い信念があった。

サービスとは何か

「企業は顧客にサービスする機関である」
アメリカのホテル王、スタットラーの言葉だ。では、企業においてサービスとはなにかと問われると、さまざまに答えがわかれるところだろう。
島津の半導体関連製品やフルイディクス機器の販売・保守を受け持つ島津エミットにとって、サービスの定義は明確だ。
「販売した製品のパフォーマンスを常に最高の状態に保つこと。これに尽きます」(今村直樹 代表取締役社長)
島津エミットが取り扱う製品は、半導体製造に欠かせない真空ポンプをはじめ、産業機械に組み込まれる油圧機器、ポンプなど、産業立国・日本を下支えする装置群だ。これらの製品は、島津製作所が開発・製造を担当し、その販売、据え付け、およびメンテナンスを島津エミットが担当している。顧客名簿には、およそほとんどの産業分野にわたる企業が名を連ねている。
現在販売されている島津の真空ポンプは、世界でも最速クラスの排気スピードで高い評価を受けている。だが、単体でどれだけ高い性能を見せようと、ラインに組み込まれたときに納得のいく性能が発揮されなければ、意味をなさない。性能は、前後に接続される装置や、設置場所の環境に大きく左右される。その一つひとつの納入先に対して、機器選択のコンサルティングに始まり、設置に必要な部品の選択、設置環境に関するアドバイスなどを添えて、ベストなパフォーマンスを提供しているのだ。
また、機械である以上、不調や故障は避けては通れない。ひとたび顧客から問い合わせがあれば、全国どこへでもサービスマンを派遣し、そのメンテナンスにあたる。
島津ブランドの装置が好評価を得ている背景には、製品そのものの良さを最大限に引き出している島津エミットの影の働きがあることを、顧客の多くが知っている。

島津エミット株式会社
代表取締役社長 今村 直樹

サービスに終わりはない

そんな島津エミットのサービス重視の姿勢を、もっともよく示しているのが、1997年の自社工場開設だ。
神奈川県秦野にある島津エミットの工場では、島津製作所が開発し、事業移管を受けた製品の製造を行っている。これらのなかには、市場が縮小しながらも製造を開始してから何十年も型を変えずに生きているものがある。
「サービス、保守を任されている私たちには、撤退はありません。お客様に一度販売した製品を使い続けていただいている以上、最高のパフォーマンスを提供するためには、交換部品や、その製品そのものを作り続けるほかない、そう考え、自社工場の開設を決意したのです」(今村社長)
産業機械の寿命は長い。ことに技術的に成熟している真空装置や油圧機器は、販売から半世紀を経過したものでも現役で活躍している装置もある。生産ラインの一部を新製品に置き換えると、製造システム全体を大幅に変更せざるをえない場合も少なくないため、あえて旧型を使い続けている事業所も多い。なぜなら、生産ラインは1分1秒でも止めたくはないのだ。
「当初、数百万円で販売していた製品にも関わらず、替わる機械がないから『たとえ二倍、三倍かかってもいいから同じものをゆずってくれないか』といわれることもあります。そのお客様にとっての最大の価値は、その装置を使い続けることで、いまのラインを変更することなく、同じ製品をつくり続けること。であれば、私たちがそのお客様に提供できる最大のサービスは、その製品をご用意すること以外にありません」

名実ともに産業を支える企業へ

「名誉ある„しんがり“を務めるのが使命」と今村社長は力説する。
「私どもは、最後の一台までその機械が使われている限りサポートを続けます」
この強い姿勢が、島津グループのブランド力を形成し働いているのだ。
いま島津エミットは、自社工場の設備と、培ってきた顧客との信頼関係を生かし、特殊な真空装置やアクチュエータなど自社のオリジナル製品の開発・販売にも乗りだしている。
「いつかは日本一のアクチュエータメーカーに」という今村社長。サービス会社の枠を飛び越え、名実ともに日本の産業を支える企業となることを目指す。

島津エミット株式会社

代表者
代表取締役社長 今村直樹
本社
大阪市中央区北浜2-5-23 Tel.06-6222-0417
設立
昭和48年3月1日
事業内容
株式会社島津製作所半導体機器事業部・フルイディクス機器部の製品販売と半導体機器事業部製品のサービス

(注)所属・役職および研究・開発、装置などは取材当時のものです。