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(注)所属・役職および研究・開発、装置などは取材当時のものです。

PET/CT「SET-3000GCT(Eminence SOPHIA)」を導入

低被ばくで高画質の放射線診断で地域医療に貢献

医療法人社団カレスアライアンス 日鋼記念病院

放射線診断・放射線治療で、北海道の拠点的存在である日鋼記念病院。昨年、島津のPET/CT「エミネンス ソフィア」を導入した同病院、望月孝史放射線科科長にお話をうかがった。

人物を撮影して、背景を合成する。テレビの世界では日常的に使われている手法だが、医療の現場でも画像合成は日常作業だ。
直径1cm以下のガンをとらえることができるとして近年注目を集めているPET。ガン細胞が糖分を好むという性質を利用して、ごく微量の放射線の出る物質(ポジトロン核種)をくっつけたブドウ糖(フルオロデオキシグルコース)を注射。その放射線をカメラでとらえ小さなガンもくっきりと浮かび上がらせる。 もっとも、これだけではまだほの暗い画面に光の粒が散っているだけの写真でしかない。人体のどこにガン病巣があるのかを正確に知るためには、人体の白地図を別に作成してそれと合成するという工程が必要になる。その白地図作成のためにはCTスキャンでの撮影が必要だ。PET画像とCT画像を重ね合わせて、はじめて詳しいPET診断が可能になる。
だが、この診断法には問題も少なくない。
「PET撮影だけでも数十分の時間がかかり、患者さんの負担も相当のものです。それに加えて検査室を移動してCT撮影をするとなると、苦痛は想像にかたくありません」と北海道室蘭市の日鋼記念病院放射線科の望月孝史科長。
同院は15年前、まだPETという名前すら知られていないころに、北海道大学の核医学講座とPETの共同研究を開始。1998年には同院内にポジトロン核種を製造するサイクロトロンも設置。放射線診断、放射線治療で、道内でも有数の技術の実績を持つ先進的施設だ。2005年の年末には、島津のPET/CT「エミネンスソフィア」の臨床第1号機も導入した。そんな同院の放射線科PET・核医学部門を取り仕切るのが望月科長。同院でPETが導入された初期から携わっており、何千という撮影に立ち会ってきた。それだけに患者さんの負担には敏感だ。
問題はまだある。PETでは通常「気をつけ」の姿勢で撮影するが、CTでは「万歳」の姿勢をとることになる。できあがるPET画像とCT画像では、肩や脇の下などの位置が大きく異なることになり、転移ガンが見つかりやすい脇のリンパ節などの位置を正確に割り出せないのだ。
そこで近年登場したのがPET/CTだ。一台の装置にPETカメラとCTスキャナーをまとめ、一回の検査で両方の画像がとれるのだが、島津のPET/CTは技術が斬新だ。
「PET/CTは非常に便利なのですが、これまではCTでPET画像を補正しているため、金属部分があるとそこで激しいノイズが生じることや、PET画像は7~8枚の静止画像を継ぎはぎした画像のため、画像のつなぎ目部分に不要な線が出ることがあり、導入をためらっていたんです。そこで、島津さんにこうした技術的問題を解決できるのではないかと相談し、何度も意見交換をした結果、今回の機種が出来上がったんです」
島津のPET/CTの最大の特徴は、“吸収補正”用の線源を独立させていることだ。PET/CTはクリアな画像を得るために吸収補正という手順をとるが、従来の機種はCTから照射されるX線を使って吸収補正をしていた。これに対して島津のPET/CTはPET検査専用の外部線源を利用する。そのため、精度の高い吸収補正が可能で、かつ吸収補正目的の全身CT撮影を行なう必要がないのだ。
「PET撮影して異常がある場所の周辺だけCT撮影するので、全身をCT撮影する場合に比べて患者さんの被ばく線量をおよそ10分の1くらいまで低減できることになります。また、PET撮影で異常がない場合は、CT撮影をする必要がないので、患者さんのCT被ばくを避けることができます」
「私たち“画像屋”は、きれいな画像を撮るのが仕事です。時間をしっかりかければきれいな画像を撮ることはできますが、それでは患者さんの負担は増すばかり。大変なジレンマだったんです。しかし島津のPET/CTを導入してからは、その両方を同時に満たせるようになりました。検査時間は従来の半分で、しかも画質はそれまでの同等以上。よくぞ作ってくれたと放射線医を代表してお礼を言いたい(笑)」
検査時間が短縮できたことで、より多くの患者さんの診断ができるようにもなる。患者さんのことを最も大切に考える日鋼記念病院の姿勢は社会に高く評価されており、地域医療における同院の役割がますます期待されている。

医療法人社団 カレスアライアンス日鋼記念病院

放射線診断、放射線治療で、道内でも有数の技術と実績を持つ先進的な総合病院で、高く評価されている。

〒051-8501北海道室蘭市新富町1-5-13
TEL:0143-24-1331(代表)

http://www.nikko-kinen.or.jp/

PET/CT「SET-3000GCT」での撮影の様子
(日鋼記念病院にて)

必要な部分だけをPET/CT画像として見ることができる。
資料提供:日鋼記念病院

望月 孝史

1997年北海道大学医学部大学院修了。福井医科大学高エネルギー医学研究センター研究員、北海道大学医学部核医学講座医員を経て。2003年日鋼記念病院放射線科PET・核医学画部門科長に、2004年健診センター センター長を兼務。現在に至る。

(注)所属・役職および研究・開発、装置などは取材当時のものです。