島津奨励賞

過去の受賞者情報

2022年度 島津奨励賞
(3名を選出)

国立研究開発法人理化学研究所
創発物性科学研究センター

チームリーダー

山本(やまもと) 倫久(みちひさ)

国立大学法人 京都大学
エネルギー理工学研究所

教授

宮内(みやうち) 雄平(ゆうへい)

東京工業大学
物質理工学院

准教授

相良(さがら) 剛光(よしみつ)

受賞者には、表彰状・トロフィー・副賞100万円を贈呈
受賞者
国立研究開発法人 理化学研究所 創発物性科学研究センター チームリーダー 
山本 倫久 氏(45才)
研究業績
固体の電子波を利用した革新的な位相計測技術と量子デバイスの開発
推薦者
一般社団法人 日本物理学会
受賞理由
山本 倫久氏は、独自の半導体量子干渉計を用いて、固体の量子回路を伝搬する電子波の位相、多体のスピン量子コヒーレンス、結晶中の電子波の伝搬方向の電気的な計測と制御を世界で初めて実現しました。
さらに現在、自身が代表を務めるJST-CRESTのプロジェクトなどで、この位相制御の技術を量子情報技術に応用する研究を推進しています。この研究は、小さなハードウェアで多数の量子ビットを制御することも可能にすることから、既存のシステムと比べて圧倒的に効率的なアーキテクチャーを持つ量子計算機が実現する可能性があるなど、今後の発展についても強く期待できます。
当財団では、これら業績が今後も発展し、高度な量子技術を用いて物性科学の問題をミクロな視点から解き明かし、量子技術と物性科学を融合させた新しいフロンティアを切り拓く可能性を有することを高く評価しました。

山本氏の島津奨励賞受賞については、理化学研究所のHPでも紹介されています。
受賞者
国立大学法人 京都大学 エネルギー理工学研究所 教授 
宮内 雄平 氏(43才)
研究業績
カーボンナノチューブの励起子発光計測と新規熱効果
推薦者
過年度島津賞受賞者
受賞理由
宮内 雄平氏は、カーボンナノチューブ(CNT)において、発光・輻射現象に関わる励起子に関する研究を行い、励起子の閉じ込めによる長寿命化がもたらす高効率発光や、熱によるアップコンバージョン発光などを見出しました。
また、独自の単一ナノ物質暗視野分光計測技術を確立し、熱輻射の制御により熱から電力を取り出す新技術への応用可能性を示す「熱励起子」生成の実証に成功するなど、CNTに関する様々な新規で有用な励起子の性質を発見しました。これら新たに発見された励起子の性質は、温暖化物質であるCO2の固定先となりえるCNTが、社会的に有効活用をなし得る可能性を示しています。
当財団では、これら業績が、従来の「常識」にとらわれない優れた研究の成果であり、今後の発展によって、その成果が社会に還元されうることを高く評価しました。

宮内氏の島津奨励賞受賞については、下記HPでも紹介されています。
京都大学HP京都大学エネルギー理工学研究所HP
受賞者
東京工業大学 物質理工学院 准教授 
相良 剛光 氏(40才)
研究業績
微小な力を可視化する有機超分子材料の開発
推薦者
過年度島津賞受賞者
受賞理由
相良 剛光氏は、自身が発見した「分子集合体の構造変化による蛍光メカノクロミズム」という現象を洗練・深化させることで、pNオーダーの微小な力の計測・可視化技術を確立しました。この成果は、従来適用できなかった分野で、物理計測の基礎である「力計測」を可能としています。
同氏は、現在、pNオーダーの微小な力を1分子レベルで可視化するという、「超分子メカノフォア」に関する研究へと進んでおり、実現すれば、生細胞が生み出す機械的刺激や、MEMSなどのマイクロスケールのデバイス内やマイクロ流路内部で発生している摩擦を分子レベルで鋭敏に検出・可視化をも可能となるとみられています。
当財団では、これらの業績が、従来は不可能であった計測・観測を実現し、新しいデバイス開発や生体機能の理解に寄与する可能性を有するものであることを高く評価しました。

相良氏の島津奨励賞受賞については、東京工業大学のHPでも紹介されています。

(年齢は、いずれも当年度事業開始日である2023年4月1日時点のものです)

島津奨励賞とは

2018年度新設の賞で、科学技術、主として科学計測に係る領域で、基礎的研究および応用・実用化研究において独創的成果をあげ、かつ、その研究の発展が期待される45歳以下の研究者を表彰します(毎年3名以下)。受賞者には賞状、トロフィ、および副賞100万円を贈呈します。