島津奨励賞

過去の受賞者情報

2021年度 島津奨励賞
(3名を選出)

大阪大学
医学系研究科

教授

茂呂(もろ) 和世(かずよ)

理化学研究所
脳神経科学研究センター

チームリーダー

村山(むらやま) 正宜(まさのり)

愛媛大学
宇宙進化研究センター

准教授

松岡(まつおか) 良樹(よしき)

受賞者には、表彰状・トロフィー・副賞100万円を贈呈
受賞者
大阪大学 医学系研究科 教授 
茂呂 和世 氏(44才)
研究業績
抗原非依存的アレルギー発症の責任細胞である2型自然リンパ球の発見と機能解明
推薦者
島津科学技術振興財団 理事
受賞理由
茂呂氏は、T細胞、B細胞、NK細胞等の免疫細胞とは異なる新しいリンパ球である2型自然リンパ球(ILC2)を世界に先駆け発見した(Nature 2010)。従来、アレルギーは抗原に対するT細胞の過剰な反応が原因と考えられていたが、多様な遺伝子、タンパク発現解析によりILC2がアレルギーを誘導すること、さらにはILC2が気管支喘息やアトピー性皮膚炎を抗原非依存的に発症させる責任細胞であることが明らかにされ、新規診断法や治療法開発に発展している。
ILC2の歴史はまだ浅いが、この発見が世間に与えたインパクトと他分野に与えた波及効果の高さは群を抜いている。茂呂氏の、計測技術を医学に応用し、存在すら知られていなかった細胞を発見、短期間に治療法開発まで発展させた、その業績を高く評価した。

茂呂氏の島津奨励賞受賞については、理化学研究所のHPでも紹介されています。
受賞者
理化学研究所 脳神経科学研究センター チームリーダー 
村山 正宜 氏(43才)
研究業績
覚醒マウス脳の広域神経網の活動を検出できる2光子顕微鏡FASHIO-2PMの開発
推薦者
日本神経科学学会
受賞理由
村山氏は、国内10グループものエキスパート集団を連携させ、2光子顕微鏡FASHIO-2PM(Fast scanning, high optical invariant two-photon microscopy)を構築し、従来比36倍の9mm2におよぶ広い視野を、高解像度・高速撮像・高感度・無収差と同時に実現した。
開発したFASHIO-2PMは、細胞レベルで脳の動作原理を広域ネットワーク動態として捉えることを可能とするもので、FASHIO-2PMを利用することで可能となった研究成果により、神経科学における長年の謎に対する答えを権威ある学術誌で発表し、日本の産業界と学術界のレベルの高さを世界に発信した。
本顕微鏡を用いることで、前人未踏の広域ネットワーク生理学分野を拓く可能性を示した、その業績を高く評価した。

村山氏の島津奨励賞受賞については、理化学研究所のHPでも紹介されています。
受賞者
愛媛大学 宇宙進化研究センター 准教授 
松岡 良樹 氏(39才)
研究業績
大規模観測データの高度処理による最遠方宇宙でのブラックホール大量発見
推薦者
日本天文学会
受賞理由
ブラックホールは極めて強い重力のため光すら脱出できない極限状態の天体であるが、中でも100万太陽質量を超える最重量の巨大ブラックホールについては、いつ、どこで、どのように生まれるのか明らかになっていない。
松岡氏は、超重量の巨大ブラックホール誕生の秘密を明らかにするために国際共同チームを率い、高度な情報処理手法を駆使して、100個以上に及ぶ大量の最遠方ブラックホールを発見することに成功した。
松岡氏の研究は、最新の観測機器が生み出すビッグデータに独創的な高度情報処理手法を適用することで、宇宙物理学の新たな地平を拓いたもので、発見天体は現在も、世界中の天文台や宇宙望遠鏡を用いた活発な追観測・研究の対象となっている。このように科学計測に本質的に関わる優れた業績である点を高く評価した。

松岡氏の島津奨励賞受賞については、愛媛大学のHPでも紹介されています。

(年齢は、いずれも当年度事業開始日である2023年4月1日時点のものです)

島津奨励賞とは

2018年度新設の賞で、科学技術、主として科学計測に係る領域で、基礎的研究および応用・実用化研究において独創的成果をあげ、かつ、その研究の発展が期待される45歳以下の研究者を表彰します(毎年3名以下)。受賞者には賞状、トロフィ、および副賞100万円を贈呈します。