数年かかる耐候性評価を数日へ
材料の劣化分析を効率化する前処理装置
塗料や樹脂、ゴムなど、私たちの身の回りにあるさまざまな材料は、光や熱、湿度などの影響で少しずつ劣化し、変色やひび割れが生じます。素材メーカーでは、製品の耐久性や寿命の予測のために評価試験を実施していますが、それには長い時間がかかります。
2025年に発売した複合劣化促進解析ユニット「CDAS-1000」は、材料の劣化を数日で促進し、材料の耐候性評価を効率化する世界初の前処理装置です。

複合劣化促進ユニット「CDAS-1000」。劣化過程で発生するガスや材料表面の劣化機構を解析するための前処理装置で、材料の劣化のしやすさを1~2日程度で評価できる
年単位の耐候性試験
屋外で使用されることの多い素材は、太陽光や風雨、湿度の変化といった自然環境にどれだけ耐えられるかという耐候性が重要です。その評価手法として、自然環境下で劣化させる屋外暴露試験や、劣化を促進する機器を用いた促進耐候性試験が一般的ですが、前者は数年~数十年、後者でも数千時間を要します。


自然環境下で使用される素材は、太陽光や雨などの影響で劣化する(写真はイメージ)
そこで開発されたのが、複合劣化促進解析ユニット「CDAS-1000」です。開発メンバーの加藤裕樹(分析計測事業部技術部)は次のように話します。
材料の耐候性試験において、劣化に膨大な時間を要することのほかにもう一つ課題がありました。素材メーカーなどで研究開発にあたる研究者の方々は、色あせや艶の変化を目視で確認して劣化の度合いを判断していました。その場合、変化は確認できても、なぜ劣化したのかという原因の解明は困難です。こうした課題を解決したいと思いました。

複合劣化促進ユニット「CDAS-1000」と分析計測事業部技術部の開発メンバー。(右から)アナライザーG グループ長 小田竜太郎、新事業開発推進G 主任 長谷川雪憲と主任 加藤裕樹
劣化のメカニズム解析を支援
複合劣化促進ユニット「CDAS-1000」は、材料の劣化を短期間で促進する前処理装置です。劣化過程で発生したガスの成分や、材料表面の状態を当社のガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)やフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)、電子顕微鏡(SEM)などで調べることが可能です。劣化のメカニズムの解明に有用な情報の取得が可能になり、素材の研究開発を効率化します。

試料を入れたバイアル(密閉容器)を装置にセットする様子。バイアルに水を添加すると、加水分解についても評価できる
開発チームは試作機を素材メーカーの方々にお使いいただき、そのフィードバックをCDAS-1000に反映しています。搭載する光源は、強い紫外線を発するUVランプと、太陽光の波長全域を再現するキセノン(紫外可視光線)ランプの2種類からいずれかを選択できます。加えて、より自然環境下に近い条件設定を可能にするため、湿度と温度の負荷をかけられるようにしました。
開発メンバーのコメント
加藤は、CDAS-1000で実現したい夢があるといいます。
発売後は、建築材料や窓ガラス、漆(文化財)などの研究者の方々から反響がありました。フランスで開催された材料劣化に関する国際学会での活動発表では、出席した研究者の方から「興味深い製品だ」とのご意見をいただくことができました。
耐候性試験の世界に、新たな可能性を提示できたのではないかと思います。私たちは、材料試験には何ヶ月も何年もかかるという業界の常識を変えたいと思っています。
見た目の変化に加えて、劣化のメカニズムまで科学的に解き明かし、お客様の研究開発を加速させていく。それが、私たちがCDAS-1000を通して実現したい夢です。今後も、科学技術でお客様に貢献していきます。
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