米国の島津グループ従業員がASTMの水質委員会「標準化開発賞」を受賞
世界中が同じ「ものさし」で水を測れるように
米国で当社の計測事業を統括するグループ会社 Shimadzu Scientific Instruments, Inc.(以下、SSI)の ウイリアム・リップス(William Lipps)が、ASTM Internationalの水質委員会(Committee D19 on Water)における「標準化開発賞」を受賞しました。ASTMで40年以上にわたり、水質分析と国際標準化活動を牽引してきた功績が高く評価されました。

中央で盾を持つウイリアム・リップス
世界中の産業で使われる標準規格をつくる「ASTM International」
ASTM Internationalは、材料・製品・試験方法・安全基準などの「標準(規格)」をつくる米国の非営利団体で、工業分野を中心に広く使われるASTM規格を発行しています。
150カ国から3万人以上のメンバーがボランティアとして参加し、約150の技術委員会に分かれて標準の開発と維持を行っています。
このうち「水質委員会」では、水の性質や成分などを総合的に評価するための標準試験法づくりが進められています。標準試験法があることで、世界中どこでも同じ方法で水を測り、同じ基準で安全性を判断できるようになります。私たちが毎日使う水道水の安全は、こうした標準化という「見えないインフラ」にも支えられています。
規格づくりは、多くの関係者の合意形成に加え、科学的に正しい方法かどうかの徹底的な検証や、国際的な利害調整が欠かせません。リップスは2017年から2023年まで水質委員会(Committee D19 on Water)の委員長を務め、現在も副委員長として委員会を支えながら中心的な役割を担っています。

ASTMだけでなく様々な委員会で活躍するリップス、AOAC INTERNATIONALでは専門審査員として食品、環境、農業、医薬品などの分析法の標準化にも携わる
どこで、誰が測定しても、同じ方法・基準で評価できること
今回、リップスが受賞した「標準化開発賞」では、島津グループがこの3年間で主導して開発した次の4つの分析手法が対象となりました。
いずれも、水の中にごくわずかに含まれる有害物質を、正確に“見える化”するための方法です。これらの手法が広く使われるようになれば、世界各地で同じ基準で水の安全性をチェックできるようになります。
受賞対象となった4手法
| 手法の概要 | 分析対象 | 社会的な意義 | 開発パートナー | |
|---|---|---|---|---|
| 1. | LC-MS/MS(トリプル四重極型液体クロマトグラフ質量分析計)で、水中のごく微量成分を高感度に測定 | ニトロソアミン類(発がん性が懸念される化合物) | 水の安全性評価に貢献 | Shimadzu India Private Limited |
| 2. | 動的画像粒子サイズ・形状分析装置で、水中に含まれる微小プラスチックの大きさ・形状を測定する試験法 | マイクロプラスチック | 海や河川の汚染状況を客観的に把握 | 島津製作所 分析計測事業部 Solutions COE |
| 3. | GC-MS/MS(トリプル四重極型ガスクロマトグラフ質量分析計)による、水中の農薬・PCBの定量方法 | 農薬・PCB(ポリ塩化ビフェニル) | 農業由来・工業由来の汚染物質を監視 | 島津製作所 分析計測事業部 Solutions COE |
| 4. | LC-MS/MSによる水中農薬・除草剤の定量方法 | 農薬・除草剤 | 農薬使用と水環境保全の両立に貢献 | 島津製作所 分析計測事業部 Solutions COE |
「より良いはかり方」を世界へ ― プラネタリーヘルスの追求
島津グループは、「プラネタリーヘルス(人と地球の健康)の追求」を目指して、先端的分析計測手法の国際標準化を重点テーマの一つとして取り組んでいます。
世界中で同じ基準で環境を測れる「ものさし(国際標準)」を整備するだけでなく、機器に加えて、分析手法、前処理、試薬、ソフトウェアまで含めた“測り方そのもの”を届けることで、水質・環境の改善を確かなものにしていきます。
また、こうした取り組みを未来へつなぐため、国際標準化の舞台で活躍できる人財の育成にも力を入れています。
リップスも、ASTM参画当初は規格案への投票や、ILS(複数のラボで同じ試験を行う共同試験)の担当からスタートしました。経験を積み重ね、委員長として国際標準試験法づくりをリードする立場となりました。このような経験は、若手が国際標準づくりに挑戦していくための支えになります。

担当者のコメント
今回の受賞は、SSIや島津製作所の仲間をはじめ、世界中のチームの支えがあってこそ実現したものです。新しい試験法の開発は、一人では決して成し遂げられません。
私たちが目指しているのは、標準化を通じて社会に役立つ「より良いはかり方」を届けることです。今回の試験法も、最終的にはEPA(米国環境保護庁)の承認を得て、広く活用されることを期待しています。
標準化は時間のかかる取り組みですが、私たちの努力は確実に前に進んでいます。これからも仲間とともに、より良い分析法を世界に届けていきたいと思います。
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