新米の季節到来!米の美味しさは「光」で測る
「令和のコメ騒動」―――。2024年の夏以降、米の需要と供給のバランスが崩れ価格高騰が進み、小売店から米が消えるなど大きな社会問題へと発展しました。農林水産省の発表によると、2024年産のコメの相対取引価格(玄米60キロ当たり)は24,751円と高値を記録。2006年産から2023年産にかけてのコメの相対取引価格は11,967円から16,501円を推移しており、現在は2倍近くの価格となっています。
これをきっかけに備蓄米や外国産米など、さまざまな種類の米を目にするようになったことで、米の美味しさや好みの味について考えた人も多いのではないでしょうか。実際に、米の美味しさや品質について評価し、データを表示するなどのニーズが高まっています。
米の美味しさは、「食味評価装置」を使って数値で表すことができます。その食味評価装置の心臓部には、島津製作所の「回折格子」が活躍しています。
米の美味しさを測る「食味評価装置」
米の美味しさは、味、香り、色、粘り、硬さなどが挙げられ、官能検査と理化学測定によって評価します。品種や生産地、気候、栽培方法や精米方法などのさまざまな要因が影響します。
米の美味しさを数値化する装置が「食味評価装置」です。米に含まれる成分の一部である水分、アミロース、たんぱく質などを測定し、各メーカーが独自に設定した計算式によって100点満点中の食味値を出します。
食味評価装置による測定には、近赤外線(約750〜1000nm)が用いられます。近赤外線を米に照射すると、成分ごとに光の一部が吸収され、通り抜ける光の量が減少します。この吸収量の違いをもとに、含まれる成分の種類や量を推定して、お米の成分バランスを評価します。数十秒ほどで測定できるため、多くの農業団体などで活用されています。
光を分ける「回折格子」
この測定のように、光を当てて成分の種類やその量を測定するためには、光を波長ごとに分けることが不可欠です。そこで活躍するのが当社の「回折格子」です。
モノクロメータ用凹面回折格子
回折格子とは、光を波長ごとに分けることができる光学部品です。肉眼で見ると、まるで虹色に光っているように見えるのが特長です。表面には、1mmあたり数百本から数千本の細かな溝が刻まれており、光を当てると各波長の光が特定の角度で跳ね返り、互いに強め合うことで目的の波長を選び取ることができます。
米や果物、野菜の美味しさを測る
当社では、およそ50年前からこの回折格子を製造しています。自社の分析機器はもちろん、人工衛星や各種精密機器にも欠かせない部品として供給しています。米の美味しさだけでなく野菜や果物の糖度や酸度も測ることができます。私たちが普段、スーパーなどで食べ物を購入する際の判断材料である「美味しさの指標」の提供に貢献しています。
