2022.12.05

ビールの美味しさ、その裏には科学技術が
クラフトビール会社・伊勢角屋麦酒、Far Yeast Brewingとコラボレーション

伊勢角屋麦酒 鈴木成宗社長、Far Yeast Brewing 山田司朗社長

島津製作所は、国際的な賞を数多く受賞した、個性的なクラフトビールを手掛ける伊勢角屋麦酒(有限会社二軒茶屋餅角屋本店)およびFar Yeast Brewing株式会社に技術協力しています。

ビールの美味しさや品質、その背景には科学技術の存在があるのをご存知だったでしょうか。当社の主力製品、クロマトグラフや質量分析計などが多数稼働する業界です。

11月16日には、2社の社長を当社にお招きし、社員向けの講演会や試飲会が行われました。

 

ビール作りに欠かせない科学的アプローチ

近年のビール業界のトレンドは多様性だといいます。クラフトビールが売り場に多数並ぶ様子を見たことのある方も多いのではないかと思います。クラフトビールの市場規模も年々大きくなっているようです。

ビールのテイストや味の多様化も進みました。味や香りの数値化、一定品質の確保のため、分析装置の必要性が一層高まっています。

工程 分析するサンプル
原料 麦芽、ホップ
醸造 新規酵母、新規原料、醸造条件を変更した原酒
最終工程 完成品

伊勢角屋麦酒の工場移転を支えた質量分析計

伊勢角屋麦酒は三重県伊勢市のブルワリーです。元々は老舗の餅屋でしたが、21代目の鈴木成宗社長がビール作りを始め、世界的な賞を数多く獲得しています。

同社は2018年に工場を移転しましたが、新工場ではそれまでの品質を維持できずに苦労したといいます。原因究明に当社も協力し、ガスクロマトグラフ質量分析計で新旧工場のビール代謝物を網羅的に分析。新工場のビールでは、特定の成分が高濃度に検出されたことで、酵母にストレスがかかっていることがわかり、醸造条件を見直して品質調整に成功しました。

また、高速液体クロマトグラフで同社のホップ飲料を分析し、一般的なビールにはあまり含有していない機能性成分が豊富に含まれていることを突き止めました。結果をもとにして市場開拓を計画しているといいます。

鈴木社長は講演の中で、科学的な裏付けの重要性や研究開発型企業を目指している旨などを紹介していました。

伊勢角屋麦酒 鈴木成宗社長 

当社のコミュニケーション誌「ぶーめらん」Vol.42で、鈴木社長の特集をご覧いただけます。

Far Yeast Brewing協力のもとで香気成分データベースを開発

Far Yeast Brewingは山梨県小菅村のブルワリーです。山田司朗社長が2011年に設立しました。「ビールの多様性と豊かさ」を掲げ、珍しい製法で個性的なビールを手掛けています。

同社には、ガスクロマトグラフ質量分析計用の香気成分データベース「Smart Aroma Database」の開発に協力いただきました。

このデータベースを使って完成品の香気成分を分析し、特定成分が一般的なビールよりも特異点に多いことを確認しました。同社では、同系統の香気成分を持つ食材を使ったペアリングメニューを作り、直営飲食店で提供しています。

山田社長は、ホップの香気成分を注目分野に挙げており、国産ホップの盛り上がりに期待を寄せていました。

Far Yeast Brewing 山田司朗社長 

業界の裾野拡大を目指して

当社は、これまでのデータを提供いただき、学会などで発表するとともに分析例として公開しています。貴重なデータに、世界中の酒類メーカーなどから反響が届いています。

今後も2社との連携を続け、ビールの総合的な分析技術や評価技術を検討していきます。科学的根拠のある酒類開発の裾野を広げたいと考えています。

各社のビールを分析した、当社分析計測事業部 Solutions COE グリーンソリューションユニットの武守佑典は次のようにコメントしています。

世界的な賞を受賞しているビールの秘密は? とワクワクしながら分析した結果、多くの特徴的な成分が検出されました。

伊勢角屋麦酒・鈴木社長、Far Yeast Brewing・山田社長の"深いサイエンスの知識+熱いビールへの思い"のもと、今まで島津製作所単独では得られなかったデータを取得することができました。

今後、革新的な分析手法や分析装置を生かした新しいビールの開発などを2社とともに世界へ発信してきたいです。

乾杯!!

島津製作所 分析計測事業部 Solutions COE グリーンソリューションユニット 武守佑典 

 

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