IoT技術を活用して効率的に廃プラスチックを回収
サプライヤーと一体で環境負荷を低減

島津製作所の廃プラスチック管理場所

島津製作所は、IoT技術を活用した廃プラスチックの回収効率化をサプライヤーとともに進めています。当社一社だけではなくサプライヤーと協働することで、一層の環境負荷低減効果があります。

2020年1月にスタートさせた日本初の取り組みには注目が集まり、SDGsや地方創生に繋がる特長的な事例として、経済産業省 近畿経済産業局や総務省 自治行政局にも紹介されています。

担当する、島津製作所 環境経営統括室 マネージャーの三ツ松昭彦に話を聞きました。

 

IoT技術を活用した廃プラスチック回収システムとは

IoT技術を活用した廃プラスチック回収システムは、センシング技術を利用して複数事業所の廃プラスチック保管量を見える化し、共同回収する事で効率を高めるものです。

各事業所の廃棄物保管所に設置したIoTセンサーが、廃プラスチックの集積量を常時モニタリングします。

一定の集積量に達すると、その情報をキャッチした廃プラスチック回収業者が複数の拠点を巡回し、効率的に廃プラスチックが回収されます。

 

廃プラスチック保管所のIoTセンサー

保管所の天井に複数設置してあるIoTセンサー

天井に設定してあるIoTセンサー

超音波で廃プラスチックの量を算出している

IoTセンサー導入事業所と位置関係

島津製作所 三条工場、紫野工場、瀬田事業所
サプライヤー 日本電気化学株式会社
サプライヤー サンコーエンジニアリングプラスチック株式会社

これら5事業所の廃プラスチック保管所にIoTセンサーを設置し、集積量の情報を回収業者に自動通知する仕組みを組んでいます。

システムを導入した事業所の位置関係

(赤:島津製作所の事業所、青:日本電気化学、黄:サンコーエンジニアリングプラスチック)

システム導入の背景と廃棄物管理上の課題

本システムの導入にあたり、当社とサプライヤーは廃棄物管理上の課題を3点に整理しました。

作業の無駄 各事業所の廃棄物管理者が廃棄物保管量を常に把握し、自身で回収の手配もする必要があった
エネルギーの無駄

回収業者は複数の排出事業所/処分業者間をピストン輸送する必要があり、走行距離が伸びていた

資源の無駄 小規模なサプライヤーは、廃プラスチックがリサイクル可能であっても少量な場合、単純焼却や埋め立てのような処分方法を選択していた

廃棄物管理上の3つの課題

作業・エネルギー・資源の3つの無駄が課題となっていた

システムの導入により“3つの無駄”を解消

当社が導入したシステムは、廃プラスチック量の見える化と共同回収を可能にしました。回収業者の走行距離削減と少量の廃プラスチックの効率的な回収により、“3つの無駄”を解消しました。

三ツ松島津製作所は環境経営を強力に推進していますが、地球規模の課題である環境問題の解決に向けた取り組みを当社単独で進めるには限界があります。今回のように、サプライヤーや地域との連携を図ることで環境貢献の幅が広がります。

三ツ松:また、小規模ながらも先進的な技術の導入成果を幅広く紹介し、当社の取り組みに倣う事業者が増えれば、さらに環境への貢献効果は大きくなります。地球環境問題の解決には人や企業・国といった様々な枠組みを超えた取り組みが必要であり、当社もその一端を担えたらと願っています。

システム導入後の効果と実績

システムの導入後、CO2排出量の削減やリサイクル率の向上に効果が表れています。

2019年1~2月
試算での比較

システム導入前 システム導入後
廃プラのリサイクル量 18,520kg 19,650kg(+5%)
廃プラのリサイクル率 約95% 約100%
回収業者の走行距離 1,023.4km 805.2km(-21%)
回収業者のCO2排出量 240.5kg 189.2kg(-21%)

三ツ松:廃棄物管理者の業務負荷軽減やリサイクル率の向上はシステム導入前から予想できていましたが、走行距離の削減効果は想定よりも大きく出ました。このシステムはシンプルですが、事業所の立地といった条件によって効果が変わります。今回の経験で、今後はさらに最適なシステムの構築が図れると思います。

今後の展開や応用に向けて

当社では、環境負荷を軽減する効果が出たことを受けて、取り組みの拡大を図っています。

まずは京滋地区で本回収スキームに参画する事業者を募っており、興味を持った事業者からの相談も受けています。また、廃プラスチックだけでなく液状廃棄物への応用についても検討に着手しています。

三ツ松:2021年3月に閣議決定された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」では廃プラスチックの効率回収が謳われています。来年施行予定となる中で、本システムの注目度はますます高まると予想しています。

三ツ松:また、プラスチック問題は気候変動問題と並ぶ環境課題であり、世界中で求められるシステムなのではないかと思います。昨秋にはJETRO(日本貿易振興機構)からお声がけいただき、シンガポールの事業者にも導入事例を紹介しました。今後は同じような話も増えると思います。

三ツ松:今回のシステムのように環境管理の高度化を図り、当社の製品や技術だけでなく、管理ノウハウの提供による環境貢献を進めることで企業価値向上に努めたいと思います。

京都府産業廃棄物3R支援センターからのコメント

当社も参画していた、京都府による「IoT・スマート産業廃棄物削減対策事業」で事務局を務めた一般社団法人京都府産業廃棄物3R支援センターの山田一成センター長は次のようにコメントしています。

京都府による実証事業は2017年、2018年の2ヶ年にわたって実施され、島津製作所様ほか関係事業者の皆様が参画する中、同社からは排出事業者の立場として様々なことが提案されました。この結果、行政機関や回収業者では思いつかない種々の工夫がシステムに施されることになりました。

さらに、島津製作所様は実証事業後も当センターの支援制度を活用し、いち早くシステムを実装して効果的な運用を継続されており、当センターとしても非常に喜ばしく思っています。また、去る3月には当センター主催のリモートセミナーにもご協力いただきましたが、定員の40名はまたたく間に埋まり、社会的にも非常に興味を持たれているシステムであることを改めて実感したところです。

聞くところによれば、本システムの普及拡大を図られるとのこと。当センターとしても社会的意義の高い本システムの普及に向け、引き続き島津製作所様との協働を進めたいと思います。

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